生活世界の中に言語の3階層(深層・象徴言語、日常・交信言語、思考・観念言語)はどのように位置づけられるのか、【生活世界と言語3階層の関係を探る!】以降のブログでさまざまな角度から考えてきました。
これらを踏まえて、それぞれの言語の特性を要約すると、以下のように整理できます。
●深層・象徴言語 「身分け」で生まれたモノ界の「おぼえる(覚える)」行動に対応する識知として、あるいは「識分け」で生まれたモノコト界の「しる(識る)」行動への接近として、識知界で使われている言葉である。 基本となる音声言語では、擬声語・擬音語、擬態語・擬容語、擬情語などが、地縁共同体である特定民族の音声感覚、つまり言語アラヤ識によって、それぞれの基盤が形成されている。 ●日常・交信言語 「識分け」で識知されたモノコトを、「言分け」によってコト界のコトに転換し、「はなす(話す)」行動として、識知・理知界で使われている言葉である。 音声言語、文字言語、表象記号などがあるが、これらの言語によって、話し手と受け手の間でコト(情報)交換が可能になるのは、その記号体系(シニフィアン\シニフィエ、シンタックス、ラング)が「言語共同体」ともよぶべき地縁集団において、予め共有されているからである。 ●思考・観念言語 「言分け」で生まれたコト界において、「おもう(思う)」行動やその結果を「はなす(話す)」行動に対応する手段として、主に理知界で使われている言葉である。 この言葉は、自然発生的な地縁言語共同体に基盤を置く日常・交信言語の応用から始まるが、次第に専門分野や特異分野といった、特定の“理”縁言語共同体において新たに創造された人工的言語へと進展していく。 |
3つの言語階層には、以上のような特性がありますので、それぞれの間には、次のような関係が見られます。
①自然性×人為性 深層・象徴言語では、サインもシンタックスもともに自然発生的な要素が濃厚であるが、日常・交信言語になるにつれて、少しずつ人為的、意図的な要素が加わり、思考・観念言語では極めて人為的な構造となる。 「見分け」が掴んだモノや「識分け」が捉えたモノコトを、音声や文字などに置き換える行動は人類という生物特有の認知要素が残っているが、会話や文通などを経て、議論や論文になるにつれ、目的性や正確性などの識知要素が濃くなっていく。 ②多義性×一義性 深層・象徴言語では、サインもシンタックスもともに曖昧な要素を含む多義性が濃厚であるが、日常・交信言語になるにつれて次第にシンプルとなり、思考・観念言語では極めて純粋な一義構造となる。 「身分け」で生まれたモノを識知化する深層段階での言語はかなり曖昧で多義性を含んでいるが、日常段階になるにつれ、意味も文法も次第に取捨選択され、思考段階になると、明確かつ一義的なものなる。 ③地縁性×理縁性 深層・象徴言語では、サインもシンタックスもともに地縁発生的な要素が濃厚であるが、日常・交信言語になるにつれて少しずつ理縁的要素が加わり、思考・観念言語ではほとんど理縁的な構造となる。 「身分け」から「言分け」を経て言語が生み出されるのは、一般的には特定地域の地縁集団の内部であるが、日常・交信言語になるにつれて他地域の集団との間で言語の共有化が進み、さらに思考・観念言語になると、特定分野の専門家などの理縁集団によって創造されるケースが多くなる。 |
以上のように、3つの言語階層の間には、それぞれの特性によって3つの方向に分離されるという、明確な傾向が潜んでいるようです。
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