生活世界の構造と精神状態や生活願望の関係を明らかにしてきましたので、いささか前後しましたが、この構造と言語3階層の関係、つまり思考・観念言語、日常・交信言語、深層・象徴言語がどのように位置づけられるのか、を明らかにしていきます。
「言分け」で生まれたコト界において、「おもう(思う)」行動や「はなす(話す)」行動に対応する手段として使われている言葉です。 実例としては、音声言語(思考語、学術語、専門語など)、文字言語(数字、学術文字、専門文字など)、表象記号(物理・化学記号、学術記号など)が相当します。 コト界は人間が言語記号によって独自に作り出した世界ですから、思考・観念言語は典型的な人工記号として生み出され、かつ人為的なルールによって使用されています。 |
●日常・交信言語
「識分け」で識知されたモノコトを、「言分け」によってコト界のコトに転換し、「はなす(話す)」行動として使われている言葉です。 実例としては、音声言語(口頭語、会話語、交信語など)、文字言語(表音文字、文書文字など)、表象記号(絵文字、文字記号、音声記号、交通標識、鉄道信号など)が相当します。 モノコト界のモノやコトは、「言分け」でコトとして“理知”されると、共同体が共有する記号として定着し、会話や文通を通じて情報交換を可能にします。 音声や文字などの記号と識知された対象が、シニフィアン(意味するもの)とシニフィエ(意味されるもの)として結びつき、特定のシンタックス(統辞関係)として流通するようになるからです。 その意味で、日常・交信言語は、コト界とモノコト界を始終出入りする言語階層と言えるでしょう。 |
●深層・象徴言語
「身分け」で生まれたモノ界の「おぼえる(覚える)」行動に対応する手段を基本としつつ、モノコト界の「しる(識る)」行動への接近としても使われている言葉です。 実例としては、音声言語(擬声語:オノマトペ、擬音語、擬態語、擬容語、擬情語など:注参照)、文字言語(擬声文字、擬音文字、擬態文字、擬容文字、擬情文字など)、表象記号(元型:アーキタイプ、神話像、音符記号、絵画記号など)が相当します。 モノ界のモノは、「識分け」でモノコトとして理知される以前は、さまざまな無意識的イメージとして、頭脳の内側を浮遊しています。 このイメージを原初的な言葉に変えたものが深層・象徴言語であり、それによって「識分け」段階へと移行させていくことができます。 こうした意味で、深層・象徴言語は、モノ界とモノコト界を接続させる言語階層と言えるでしょう。 |
以上で説明してきた、言語記号の3つの形、つまり音声言語、文字言語、表象記号は、下表のように整理できます。
注:金田一春彦『擬音語・擬態語辞典』角川書店:1978
擬声語:人間や動物の声を表す言葉。わんわん,こけこっこー,おぎゃー,げらげら,ぺちゃくちゃ など。
擬音語:自然界の音や物音を表す言葉。ざあざあ,がちゃん,ごろごろ,ばたーん,どんどん など。
擬態語:音ではなく何かの動きや様子を表すもののうち,無生物の状態を表す言葉。きらきら,つるつる,さらっと,ぐちゃぐちゃ,どんより など。
擬容語:音ではなく何かの動きや様子を表すもののうち,生物の状態を表す言葉。うろうろ,ふらり,ぐんぐん,ばたばた,のろのろ,ぼうっと など。
擬情語:人の心理状態や痛みなどの感覚を表す言葉。いらいら,うっとり,どきり,ずきずき,しんみり,わくわく など。
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