2021年10月24日日曜日

生活世界構造で精神状態を読む!

私たちの人類の存在基盤である「言語使用」の実態を明らかにするため、生活世界構造論を展開してきました。

この構造の中に、新たに精神状態・行動を組み入れて、全体の用語の関係をもう一度整理しておきましょう。

世界の名称

カタカナ表記・・・【ソト界―モノ界―モノコト界―コト界】は、生活世界構造論を創始された、日本の先達の用語(身分け・言分け構造)を継承して、敢えて日本語のカタカナで表わしました。

漢字表記・・・【物質界―認知界―識知界―理知界】は、カタカナ表記の意味するものを、一般的な思想用語で表現するため、漢字で表わしました。

このうち、認知―識知―理知は、人間の言語使用のさまざまな段階を表しています。

欧文表記・・・【physicsphysisGegonóscosmos】は、日本語の意味するものを一般化するため、ギリシア語の英文表記を使いました。

 精神状態・行動

漢字表記・・・【無感覚―無意識―意識―知識】は、生活世界名のカタカナ・漢字表記に対応すると推定される、人間の精神状態を一般的な思想用語で表わすため、漢字で表わしました。

このうち、無感覚は他の3つの感覚状態と対比するもの、無意識意識と対比するもの、知識は意識の中の一部となるものを、それぞれ意味しています。

ひらかな表記・・・【おぼえず―おぼえる―しる―はなす・おもふ】は、漢字表記の意味するものを、生活世界名のカタカナ表記に対応させるため、ひらかなで表わしました。

おぼえず―おぼえる】の【おぼ】は「憶える=記憶する」ではなく、「感覚」の「」を意味しています。

しる】は、「知る」ではなく「る」を意味しています。

はなす・おもふ】は、知識状態において行なわれる精神行動であり、会話と思考をそれぞれ意味しています。

以上のように、私たちの生きている生活世界を整理すると、それぞれの世界から湧き上がってくる、さまざまな生活願望の実態が如実に見えてきます。次回にご期待ください。

2021年10月19日火曜日

生活構造図を「生活世界構造図」に修正する!

前回、生活世界の基本構造を4つの世界で説明してきました。

しかし、研究者諸賢や読者の皆様からさまざまなご批判やご意見をいただきましたので、一部を下図のように修正したいと思います(今後、再考によって再修正も考えられます)。

第1「生活構造論」の名称変更です。

この言葉を、当ブログでは、哲学系先達の用法を継承して使ってきましたが、経済学生活学などでは、「個人や家族の営む生活行動に観察される構造」など、主としてミクロ経済的・家計分析的な意味として使用されており、現象学的な「生活世界」にまでは及んでいません。

そこで、当ブログの趣旨を明確にするため、E.フッサールの「生活世界」論やA.シュッツの現象学的社会学に因んで、新たに「生活世界構造論」と名称を変更し、図解についても、「生活世界構造図」と名づけることにします。

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2は名称変更に伴う構造内の用語の変更と明確化です。

前回の文章の内、下線をつけた赤い文字を、新たな言葉に置き換えました。

生活世界の基本構造・・・私たちが日頃どっぷり浸かっている生活世界は、「ソト界(物質界)」「モノ界(認知界)」「モノコト界(識知界)」「コト界(理知界)」の4つから成り立っています。

ソト界(物質界:physics)・・・私たち人間や動物などを取り巻く、ありのままの環境世界。

モノ界(認知界:physis)・・・私たち人間が自らの「身分け」能力によって、周りの環境世界の中から把握した世界。「身分け」されたものは、まずは「無意識」として佇み、されなかったものは「無感覚」として物界に沈んでいく。

モノコト界(識知界:gegonós)・・・私たち人間が自らの「識分け(しわけ)」能力によって、モノ界の中から認知できた世界。「識分け」されたものは「意識」の対象となり、されなかったものは「無意識」のままモノ界に沈んでいく。

コト界(理知界:cosmos)・・・私たち人間が自らの「言分け」能力によって、モノ界の中から把握した世界。「言分け」されたものは「知識」となり、されなかったものは「意識」のままモノコト界を漂うことになる。

以上のような修正を行った理由を述べます。

4つの世界の名称のうち、3つはコト界、モノコト界、モノ界と大和言葉で表現していますので、物界も外界、つまり「ソト界」に修正します。

4つの世界の別称を、物質界、感覚界、認知界、識知界としてきましたが、感覚界は「身分け(=認知)」によって生まれる世界ですから「認知界」に、また認知界は「識分け(=識知)」によって生まれる世界ですから「識知界」に、それぞれ変更します。

③従来のモノコト界=認知界を今回は「識知界」に変えましたので、今回のコト界は新たに「理知界」と名づけることにします。この世界は「言分け」によって生まれる世界ですから、「理(ことわり)」による「知」という意味で、このような言葉を使いました。

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3はコト界、モノコト界、モノ界、ソト界の精神状態の明確化です。

身分け識分け言分けが進むにつれて、私たちの精神状態また次第に変わっていきます。

その変化を無感覚無意識意識知識と明確化しました。

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以上のような修正によって、生活世界構造論は今後、より多面的な議論を引き起こす可能性を孕んだ、と考えています

2021年10月11日月曜日

言語3階層説の基盤を考える!

生活構造論において、「身分け」「言分け」の間には、もう一つ「音分け」次元があるのではないか、という発想で、言語3段階説を考えてきました。

もともと生活世界の構造を哲学的な視点から再構成する「生活構造論」は、欧米の思想を参考にしながらも、日本の思想家の先達が独自に構築されたものです。

自然のままの環境世界から、人間の感覚が直に把握する「身分け」世界を最初に提唱されたのは哲学者の市川浩先生であり、それを前提にして、人間の言語能力が新たに創り出す「言分け」世界を提示されたのは、言語学者の丸山圭三郎先生でした。

このため、日本の思想界では永らく、「身分け・言分け」構造が、生活世界論の定説となってきました。

しかし、このブログで検証してきたように、欧米思想家のさまざまな言語観を振り返ってみると、「身分け」と「言分け」の間に、もう一つ、新たな次元を導入することが絶対に必要ではないか、と思えるようになりました。

そこで、とりあえずオノマトペ(擬声音)をベースとする「音分け」次元を提唱したのですが、言語3階層説の検証過程で、言語の存在次元を突き詰めていくうちに、「識分け(しわけ)」よぶべき次元に変更した方がよいのでは、と思いついたのです。

「音」の息づかいはもとより、「色」への反応、「味」や「臭」の違和感、「蝕」の有無といった「意識」次元をひとまとめにして、新たな分節次元にすべきだ、と考えたのです。

いいかえれば、感覚把握と言語把握の間に、もう一つ「意識」把握の次元がある、ということです。

感覚が把握したものであっても、意識が把握していない限り、言語の把握には至りません。意識が把握しないものは、無意識となって、身分け次元の空間に沈殿していきます。

それゆえ、仏教の唯識論井筒俊彦先生の言語アラヤ識論にも因んで、「識」次元を組み入れたのです。

「識る」は大和言葉で「シル」と発音しますから、「識分け」は「シワケ」とよぶことになります。

仕分け」と同じ発音ですが、この言葉もまた「区分して分ける」ことを意味していますから、もともとは「識分け」と同義語だった、ともいえるかもしれません。

そこで、以上のような視点から、当ブログで展開してきた生活構造論をもう一度見直し、下図のように改良したいと思います。


この図に基づいて、幾つかの論点を解説していきます。

最初は生活世界の基本構造・・・私たちが日頃どっぷり浸かっている生活世界は、「物界(物質界)」「モノ界(感覚界)」「モノコト界(認知界)」「コト界(識知界)」の4つから成り立っています。

物界(物質界:physics・・・私たち人間や動物などを取り巻く、ありのままの環境世界。

モノ界(感覚界:physis・・・私たち人間が自らの「身分け」能力によって、周りの環境世界の中から把握した世界。「身分け」されたものは、まずは「無意識」として佇み、されなかったものは「無感覚」として物界に沈んでいく。

モノコト界(認知界:gegonós・・・私たち人間が自らの「識分け(しわけ)」能力によって、モノ界の中から認知できた世界。「識分け」されたものは「意識」の対象となり、されなかったものは「無意識」のままモノ界に沈んでいく。

コト界(識知界:cosmos・・・私たち人間が自らの「言分け」能力によって、モノ界の中から把握した世界。「言分け」されたものは「知識」となり、されなかったものは「意識」のままモノコト界を漂うことになる。

4つの世界が生まれるのは、人間の基本的な能力である「身分け」「識分け」「言分け」の成果と思われます。

この構造をベースとして、言語の3階層の持つ、それぞれの特性を考えていきます。