2019年11月29日金曜日

ソーシャライジングへ向かって

これまで述べてきたように、さまざまな問題を増幅させている現代消費社会を、今後大きく超えていくには、マーケティングという経営活動にもまた、根本的な次元での転換が求められます。

従来、マーケティングとよばれてきた活動には、一方で内部転換を行うこと、他方で外部転換を試みることの、両面が必要なのです。



内部転換では、より生活民サイドに沿った体質へと接近していくことが求められ、具体的には、先に「マーケティングを内部転換するには・・・」や「ライフ・サポーティングへ向かって」で述べたとおり、次のような4つの方向をめざすことです。
①記号(サイン)誘導から象徴(シンボル)支援へ移行
②共効・個効提供から
私効支援へ移行
③顕示性提供から充足性支援へ移行。
④消費者志向から生成者(=
生活民)支援へ転換

外部転換では、新たな社会構造の構築に積極的に参加していくため、先に述べた「
マーケティングを外部転換するには・・・」や「互酬制再建へ参加するには・・・」で提起した、次の3つを行なえるかどうか、を検討していくことです。

公共的事業への関わり方の見直し
②現代社会に適合した
互酬制の再構築
③互酬活動への
参加・支援方法の検討

結論をいえば、前者は「生活支援(ライフ・サポーティング)」であり、後者は「社会支援(ソーシャル・サポーティング)とよぶことができます。

2つの方向をめざすことで、専ら市場の中での需給関係に固執してきた「市場活動(Marketing:マーケティング)は、自らその境界を突破し、生活民の内面や人間社会の外延にも視野を広げた、より広義の社会活動に進化していくことになります。

この新たな活動に、もし名前をつけるとすれば、それはまさに「社会活動(Socializing:ソーシャライジング)とよぶのがふさわしいでしょう。

2019年11月18日月曜日

互酬制再建へ参加するには・・・

マーケティングを「脱構築(déconstruction)する「外部転換」において、次の方向は「互酬制」への関係改善です。

従来の企業や市場経済システムは、互酬制を主導する家族や地縁社会など伝統的共同体との関わりについて、極力距離をおくばかりか、時には弱体化を進めてきました。

自給自足的な生産や地域内での物々交換は、圧倒的な市場交換制度によって圧倒され、徐々に縮小を余儀なくされてきたのです。

だが、過剰な市場交換を抑え、再配分・市場交換・互酬制のバランスのとれた複合社会が新たな社会目標になってくると、互酬制を再建し、市場交換制と望ましい関係を築くことが、新たな検討課題となってきています。

そこで、企業のマーケティング活動についても、次のような2つの方向が期待されるでしょう。





1つ、市民や住民など需要層のさまざまな生活需要に対して、市場経済制と互酬制どのように分担していくか、それぞれの役割を検討することです。

それにはまず、近代的な再配分制度と市場交換制度の隘路にあって、ともすれば縮小しがちな互酬性をできるだけ見直し、現代社会に適合した制度として再構築することが必要です。

成熟した社会構造を築くためには、企業活動やマーケティングにも、新たな互酬制の拡大と定着を支援することが求められるのです。

2つめ、今後、実際に拡大が予想される、家族や地域社会のさまざまな互酬活動に対して、企業活動やマーケティングがどのように参加や支援を行なえるか、を検討していくことです。

それは表面的な利潤拡大行動を超えて、より本質的・永続的な企業生命を維持・拡大するための、新たな経営行動として位置づけられなければなりません。

例えば、相互扶助や安全・防災などの機能向上を応援する〝結縁〟支援活動、幼児の子守や老人向けの宅配などの保護拡大活動、あるいは祭りや会合などの開催を助ける祭事支援活動などは、住民や庶民の暮らしを守り、豊かにしていくための、新たな支援ビジネスとして期待されるものです。

今後の社会においては、企業のマーケティング活動にも、政府や地方自治体はもとより、家族や地域共同体に対しても、より強く手を携えていくこと期待されるのです。

2019年11月9日土曜日

マーケティングを外部転換するには・・・

マーケティングを「脱構築(déconstruction)していく、もう一つの方向は、その外縁を再構築していく「外部転換」です。

外部転換とは、企業の経営活動の一つであるマーケティングの限界を超えて、望ましい社会構造を形成していくための、新たな役割を担うことを意味しています。

望ましい社会構造については、さまざまな意見がありますが、一つの方向は、先に述べたような、生成者(生活民)が新たな社会制度を創造する生成社会であり、具体的には、人類が歴史的に創造してきた、再配分、市場交換、互酬制の3つの分配制度を新たに組み合わせ、現代社会にふさわしい「三立社会」を創り出すことです。

このうち市場交換については、
先に述べたような、内部転換という形で再構築されるとすれば、改めて外部転換が必要になるのは、再配分互酬制への関わり方ということになります。



そこでまず、再配分への関係を見ておきましょう。

再配分の主体である政府部門や行政部門に対して、これまでの企業や諸法人は、一方では公共投資や受託事業などで売り上げを伸ばし、他方では納税という形で再配分の財源を担ってきました。それゆえ、マーケティングの課題は専ら公的事業への売り込みや継続性であったといえるでしょう。

この両面性は今後も基本的には変りません。

だが、三立社会が目標になってくると、さらに新たな活動が期待されます。なぜなら、政府や自治体の行政行動もまた、望ましい社会配分を達成するための一部門と考えると、企業や諸法人との関係もまた見直す必要が出てくるからです。

新たな関係とは何でしょうか。

一つは、公共的な事業への関わり方を、まったく新たな視点から見直すことです

従来、公共的なソフト事業へ民間企業などが関わる経営行動は、一般に「ソーシャル・ビジネス」や「ソーシャル・マーケティング」などとよばれてきました。

これは、企業のマネジメント・システムや市場経済システムを、社会・公共分野にも応用しようとするものです。

しかし、マーケティングの外部転換は、これとは基本的なスタンスが異なります


外部転換とは、再配分・市場交換・互酬制のバランスのとれた複合社会をめざして、企業やマーケティングに何ができるかを改めて問いかけようとするものです

それゆえ、新たなマーケティングの目標は、市民や住民などの暮らしを維持・改善するために、何が求められ、誰が対応していくべきかを、改めて検討し直し、提案していくことになるでしょう。

もう一つは、以上のような発想を基盤にして、望ましい再配分のための企画や代行へ実際に参加していくことです。

それには、従来の表層的なマーケティング手法に加えて、内部転換で再構築された深層的なマーケティング手法もまた駆使し、政府や自治体などの政策需要や行政需要を新たな視点から発掘することが求められます。

こうした経営活動によって、公的主体の発想をも超えた、新しい公共商品や公共サービスなどを積極的に提案していくことが可能になります。

例えば、福祉行政については、公的年金を補完する新私的年金制度、公的介護サービスのより適切な運用方法、生活保護とボランティア活動の連携化など、また次世代育成行政については、公的サービスを補完する育児・保育サービスの増強、国公立・私立を超えた学校制度の提案など、公私の境界を超えた事業が考えられます。

産業育成や企業支援面においても、公私一体となった新産業や新商品の開発、企業診断やコンサルティングと一体化した資金支援など、また人的能力向上面では、労働と教育の連関を強化した社会人教育や職業教育の拡大といった分野で、民間企業の制約を超えた公的支援活動が予想できます。

以上のように、これからのマーケティングは、政府や地方自治体の行政活動とも、積極的に関わっていかなければなりません。