2024年9月29日日曜日

生活学・新原論Ⅴ-2:差元化行動とは何か?

生活行動論の2番めは「差元化」行動です。

差元化とは、【差元化とは何か?】で述べたように、生活願望の「欲動」に対応して、記号や機能をあえて外すことで、身体性や直感性、原始性や動物性などの「身分け」力を回復させようとする生活行動です。

生活球でいえば、下の方に位置する生活願望「欲動」、つまり無意識・感覚、感度、体感、象徴、神話などを求める願望に向けて、言葉以前の世界を求めていくもの、ともいえるでしょう。

それゆえ、下図に示したように、生活球の下部の欲動=感覚次元において、横軸の私欲・実欲・世欲と、前後軸の虚欲・常欲・真欲をクロスした次元に、9つの行動として生まれてきます。


とすれば、差元化行動では、欲動=感覚界の9つの分野のさまざまな願望を実現するため、以下のような行動が想定できます。

中段は、私たちの世界認識行動の中核として、身分け識分けなどを行う次元です。日常的な無意識行動を真ん中に、次の3つの行動が生まれてきます。

私欲・常欲・欲動行動・・・個人的な日常の「効能」を求める身分け行動・・・例:自らの五感で捉えた音声やイメージなどを、さまざまな形に識分けしようとする行動。メタバース上に現れたイメージや音声などを、自分なりに理解しようとする行動。

実欲・常欲・欲動行動・・・日常生活での一般的な「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に五感で捉えた世界の意味やイメージなどを、他人とも共有しようとする行動。メタバース上に現れたイメージや音声などへの理解を、他人と共有しようとする行動。

③世欲・常欲・欲望行動・・・社会的な日常の「価値」を求める身分け行動・・・例:個人が五感で捉え、識分けした世界の意味やイメージなどは、人間集団に共通していると理解する行動。メタバース上に現れたイメージや音声などは、誰にも共通していると理解する行動。

上段は、無意識・感覚活動の一面として、遊びや虚脱などを行う次元です。日常的な虚脱行動を中核としつつ、その左右から、個人的、あるいは社会的な、次のような行動が生まれてきます。

➃私欲・虚欲・欲動行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中で夢や幻想などを描き、その中で戯れる行動。メタバースの中で音や風景などを楽しむ行動。

➄実欲・虚欲・欲動行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に脳内に描いた夢や幻想を、他者に話して共有しようとする行動。メタバース上の音や風景などを他者と共に楽しむ行動。

⑥世欲・虚欲・欲動行動・・・社会的な虚構の「価値」を求める身分け行動・・・例:夢や幻想の世界が多くの人間に共有しているものと理解する行動。 メタバース上の音や風景などは皆で楽しめるもの、と理解する行動。

下段は、無意識・感覚活動の一面として、信仰や規範などを求める次元です。日常的な真面目行動を中核としつつ、その左右から、個人的、あるいは社会的な、次のような行動が生まれてきます。

⑦私欲・真欲・欲動行動・・・個人的な真面目さの「効能」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中で夢や幻想などを描き、それらを信じたり重んずる行動。メタバース上に現れた虚像を信仰すべき対象と思う行動。

⑧実欲・真欲・欲動行動・・・日常的な真面目さの「効用」を求める身分け行動・・・例:個人的に頭の中へ描いた事象や信仰などを、他人に話して共有しようとする行動。メタバース上に現れた虚像を他者に信仰すべきと勧める行動。

⑨世欲・真欲・欲動行動・・・社会的な真面目さの「価値」を求める身分け行動・・・例:夢や幻想の世界に現れた神聖さや尊さは、多くの人間によって共有されている、と理解する行動。メタバース上に現れた虚像を神や仏として信仰する行動。

かなり複雑になってきましたが、身分け・識分け行動を営む生活民は、そこから生まれてくる「欲動」を満たすため、以上のような9つの行動を行っています。

これこそが“差元化”という生活行動の意味するところでしょう。

2024年9月13日金曜日

生活学・新原論Ⅴ-1:差異化行動とは何か?

生活学・新原論の5番めのテーマとして「生活行動」を考えています。

前回、私たちの生活行動には7つの基本行動があると述べてきましたので、最初に「差異化」行動について考えてみましょう。

前回の説明では、差異化とは、生活願望の「欲望」に対応して、モノやサービスのうえに言語やイメージなど、さまざまな「記号」に載せることで、新しさやユニークさなどを満足しようとする生活行動、と述べています。

この説明は、生活民のマーケティング活動を前提にした差異化とは何か?から引用したのもので、“消費”行動にやや偏っています。

それゆえ、“生活”行動として、改めて考えてみましょう。

差異化とは、生活球の上部に位置する生活願望「欲望」、つまり理性、観念、物語、抽象性などを求める願望に向けて、言語やイメージなど、さまざまな「記号」を使用する生活行動です。

これまで述べてきた生活球は、【生活体マンダラ・立方界を提案する!】で述べたように、3つの軸の【個人・間人・社会】【感覚・認知・言語】【遊戯・日常・儀礼】の各要素をクロスさせたものです。

これを下図に示したような、3×3×3の、27の小立方体に分割すると、差異化という行動は、上方の3×3の9つの分野を目ざすものとなります。


9つの分野は、上図に示したように、欲望=言語次元において、横軸の私欲・実欲・世欲と、前後軸の真欲・常欲・虚欲をクロスしたところに生まれてきます。



とすれば、差異化行動とは、欲望=言語界の9つの分野のさまざまな願望を実現する行動ということになるでしょう。具体的には、以上のような行動が含まれています。

中段は、私たちの言語・記号活動の中核として、思考や考察などを行う次元です。日常的な思考行動を中核としつつ、その左右から、次の3つの行動が生まれています。

私欲・常欲・言語(欲望)行動・・・個人的な日常の「効能」を求める言語行動・・・例:メモ用のノートに書く思索、文章、作文、日記など。私的な画帳に描くデッサンやイメージなど。

実欲・常欲・言語(欲望)行動・・・日常生活での一般的な「効用」を求める言語行動・・・例:手紙、報告書、レポートなどの記述や閲覧。設計図、デザインなどの作図や視認。

世欲・常欲・言語(欲望)行動・・・社会的な日常の「価値」を求める言語行動・・・例:新聞、雑誌、書籍などの閲覧やそれらへの執筆や著述。展覧会やエキシビションなどの鑑賞や参観やそれらへの展示や参加など。

上段は、言語・記号活動の一角として、遊びや虚脱などを行う次元です。日常的な遊戯行動を中核としつつ、その左右から、個人的、あるいは社会的な、次の3つの行動が生まれてきます。

私欲・虚欲・言語(欲望)行動・・・個人的な虚構の「効能」を求める言語行動・・・例:裏紙に詩作や創作などを書いて遊ぶ。黒板やディスプレィなどに戯画や漫画などを描いて遊ぶ。

実欲・虚欲・言語(欲望)行動・・・日常的な虚構の「効用」を求める言語行動・・・例:雑誌やディスプレィで小説を読んだり、ゲームに戯れる。美術館などで絵画に見たり、劇場で芝居を楽しみ、お気に入りのファッションを着る。

世欲・虚欲・言語(欲望)行動・・・社会的な虚構の「価値」を求める言語行動・・・例:大ヒットした文学や映画を鑑賞する。ネット上で超有名になった観光地を訪れ、有名ブランドのスーツを着る。

下段は、言語・記号活動の一角として、学びや礼節などを行う次元です。日常的な真剣行動を中核としつつ、その左右から、個人的、あるいは社会的な、次の3つの行動が生まれてきます。

私欲・真欲・言語(欲望)行動・・・個人的な真実の「効能」を求める言語行動・・・例:メモ帳に思いついた論理や理屈を書く。黒板やディスプレィなどに発想した設計図を描く。心の中で祈念する。

実欲・真欲・言語(欲望)行動・・・日常的な真実の「効用」を求める言語行動・・・例:書籍で哲学書を読んだり、ディスプレィ上で確実な情報を求める。コミュニティーの礼節に合った挨拶をする。

世欲・真欲・言語(欲望)行動・・・社会的な真実の「価値」を求める言語行動・・・例:大学の講義で真理を求めたり、寺院や教会で教義に触れる。

言語生活を営む生活民は、そこから生まれる「欲望」を満たすため、以上のような9つの行動を行っています。これこそ“差異化”という生活行動の意味するところです。