観念言語の最先端、AI言語にも幾つかの限界がある、と述べてきました。
とすれば、観念言語は、今後どのような方向へ転換していけばいいのでしょうか。
一言で言えば、「観念言語」から「統合言語」への進展です。
「統合言語」とは、下図に示したように、「網分け」領域から「言分け」領域へ踏み込んでいく言語です。
観念言語が「言分け」から「網分け」への細分化で生まれたのに対し、統合言語は「網分け」から「言分け」への合節化で作られていきます。
観念言語が自然言語から交信言語や思考言語を経て次第に抽象化されるのに対し、統合言語は思考言語から交信言語へ、さらに自然言語までをできるだけ具象化していきます。
言語機能の未来という、壮絶な展望ですから、当たるか否かは全く不明ですが、観念言語の代表として科学用語の代表、システム用語で考えてみます。
システム用語とは、AIを構成するプログラム用語のように、理知界として捉えられた頭脳内の世界だけで作動する言語です。
このシステム用語については、【システム化からストラクチャー化へ!】で述べたように、「正確ではあるが狭意である」という限界を超えるため、「曖昧であるが広義である」というストラクチャー用語への限りなき接近が求められます。「網分け」の狭窄を緩めて、「言分け」の包括をめざすということですが、次のような方向が考えられます。
①システムの網目をできるだけ細かくして、結節点であるシステム用語の数を増やすことにより、表現対象をより多く汲み取れるようにする。 ②思考結果を表現するシステム用語に、思考過程で捨象した要素を可能な限り復活させ、日常的なシニフィエに近づける。 ③個々のシステム用語のシニフィエをできるだけ大きくし、ストラクチャー用語の表現対象に近づける。 |
3つの方向のうち、①はシステム用語の細密化にすぎませんから、②③の方向こそ進むべき道だ、と思われます。
このような修正が今後正確に行われるようになれば、科学用語の一角をなすシステム用語にも、新たな次元へと進むチャンスが巡ってくるでしょう。
これこそ、「観念言語」から「統合言語」への進化を意味しています。「網分け」による観念言語の分断化を見直し、「言分け」による自然言語の包括化へ使づくこと、といってもいいでしょう。
現代の科学技術を支える観念言語から、次世代の科学技術を引き起こす、新たな言語として、統合言語の育成と拡大が期待されているのです。
もし統合言語による科学技術に見直しによって、分断的な「科学」という時代知を超えることができれば、新たな時代知、つまり統合的な新科学「オムニ₋・サイエンス(Omni-science)」、つまり「オムニシエンス(Omniscience)」が生まれることになります。
オムニシエンス(Omni-science)とは、中世ラテン語のomni(すべて)とscientia (知識)が結びついた言葉で、「全知」や「完全な知恵」を意味しており、未来社会では「統合的な知」、つまり「より総合化された科学」を表わすことになるでしょう。
これまで10回にわたり展開してきた言語6階層論は、深層言語から始まり、象徴言語から自然言語へ、交信・思考・観念言語へと進展してきましたが、最終的には7番目の統合言語に行き着きました。
つまり、人類の言語機能は今後、抽象化から一転して具象化へ向かうことになる、と予言しておきます。