2023年4月28日金曜日

AR(拡張現実)を生活民はいかに使うのか?

ハイテクツールの3番めは、ARAugmented Reality:拡張現実)を考えてみます。

前回のVRVirtual Reality:仮想現実)は、ヘッドセットとヘッドフォンを通じて、バーチャルな世界でリアルに近い体験を提供するものでした。

これに対し、ARスマートフォン、タブレット、メガネ(スマートグラス)などのモバイルデバイスを通じて、リアルな世界の映像を提供し、その上に新たな画像やテキストの情報を加え、映像世界の「拡張」をめざすものです。

例えば、スマフォのカメラで寿司を映すと、ネタの名前が明示され、スニーカーを映すと、値段、スペック、着用イメージ動画が再生されるなど、肉眼だけでは見えない情報が表示されます。

こうした機能を持つARですが、主に4つの形態があるようです。

マーカー型・・・マーカーとして事前登録した画像や写真などと特徴点が一致すると、ARコンテンツ情報を自動的に表示する。

活用事例:イベント、商品・パッケージ、カタログやポスター、書籍・広報誌、店舗など。

GPS・・・スマートフォンなどの位置情報をGPSで取得して、MAP系サービスなど、付近に設定された視覚情報を表示する。

活用事例:道案内サービス、ゴルフ場、建築物・建物、観光地案内など。

空間認識型・・・スマートフォンやタブレットの画面をユーザーがタップすることで、現実世界の空間(高低差、体積、奥行きなど)を認識し、関連した視覚情報を提供する。

活用事例:家具・家電の配置、製造業・建築業などの現場情報、ゲームやイベントの位置情報など。

物体認識型・・・スマートフォンやタブレットなどのカメラで、特定の三次元の立体物を、360度全方位から認識すると、その特徴点を解析して、関連する視覚情報を提供する。

活用事例:商品・パッケージ、おもちゃ・フィギュア・スケールモデル、製造業・産業機械・自動車などの現場情報など。

以上のようなARの4つのタイプを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の中に位置付けてみましょう。


①感覚・言語軸(縦軸)



マーカー型・・・認知界に現れるイメージを識分けし、言知界や理知界に提供されるイメージとの差異を判断する。

GPS・・・言知界に現れるイメージを言分けし、言知界や理知界に提供されるイメージとの差異を判断する。

空間認識型・・・識知界に現れたイメージを言分けして言知し、言知界や理知界に提供されるイメージとの対応を判断する。

物体認識型・・・モノ界に現れたイメージを識分けして認知したうえ、言分けして言知し、言知界や理知界に提供されるイメージとの対応を判断する。

 

②個人・社会軸(横軸)



マーカー型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまなイメージと対応させ、必要な情報を提供する。

GPS・・・ユーザーがパロール1として表すGPSを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、必要な情報を提供する。

空間認識型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、独自の使用を促す。

物体認識型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、パロール2としての使用を促す。

 

③真実・虚構軸(前後軸)

マーカー型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意されたイメージと一致すると、虚実混在した日常情報として提供される。

GPS・・・虚像として提供するGPSが、事前に用意された情報と一致すると、虚実混在した日常情報として提供される。

空間認識型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意された虚構空間の中に位置付けられ、虚実混在から実像への判断を促す。

物体認識型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意された虚構空間の中に位置付けられ、実像へのさまざまな判断を促す。


以上のように見てくると、AR(拡張現実)とは、虚構イメージを基礎にしつつも、言知界や理知界へと働きかけ、パロール2(純個人的言語行動)を促すことによって、生活民の生活世界を拡大させる社会的装置だ、といえるのかもしれません。

2023年4月11日火曜日

VRで生活民はどう変わるのか?

ハイテクツールの2番めは、メタバース(Metaverse:仮想空間)の基礎、VRVirtual Reality:仮想現実)を考えてみます。

メタバースは、コンピュータの中に構築された3次元の仮想空間やそれを利用するサービスなどを意味していますが、その技術的な基礎はXRCross Realityが担っています。

XRには、VRVirtual Reality:仮想現実)、ARAugmented Reality:拡張現実)、MRMixed Reality:複合現実)、SRSubstitutional Reality:代替現実)など、仮想世界と現実世界を融合して、新たな体験を作り出す、さまざまな技術が含まれています。

これらの中から、最も基礎となっているVRは、私たちの暮らしにどのような効用をもたらすのでしょうか。

VRは「仮想現実」と訳されているように、コンピュータを通じて仮想の世界を現実の世界として体験できる技術です。VRゴーグルを被り手足にセンサーを装着して、身体を動かせば、360度の仮想空間が楽しめます。

VRを大別すると、「視聴型」と「参加型」に分けられます。視聴型は流れている3D映像や音声を体験するもの、参加型は映像や音声の中を自由に歩き回って、そこにあるモノを動かすものです。

このような機能を持つVRを、生活民一人一人の生活構造の中に位置づけてみましょう。

生活構造とは、【「生活体」の3つの軸】で述べたように、①感覚・言語軸(縦軸)、②個人・社会軸(横軸)、③真実・虚構軸(前後軸)の、3つの軸による立方体で構成されています。

この3軸によって、VRの効用を考えていきます。

①感覚・言語軸

体感的・感性的な世界と記号的・言語的な世界を両端とする軸



当ブログで縦軸縦軸の構造・・・「身分け」と「言分け」】と名づけている軸で、この中にVRを位置づけると、次のような特性が浮かんできます。

VRが表示する世界は、視覚・聴覚・触覚によって捉えられる認知界、識知界であり、それらを言知界へ繋ぐこともできる。

視聴者は、映像と音声によって、視覚と聴覚を体験できる。

参加者はさらに、コントローラーなどを通して、自分の手を使っている感覚や、硬さや衝撃といった感覚もまた味わうなど、触覚も体感できる。

臭覚味覚については未達成である。

②個人・社会軸

私的・個人的な世界と集団的・社会的な社会を両端とする軸



当ブログで横軸横軸の構造・・・ラングとパロール】と名づけている軸で、【言語構造が作る3つの世界】と名づけていますが、この中にVRを位置づけると、次のような特性が浮かんできます。

VRの中に現れる世界は、使用者にとってパロールⅠ、パロール2の対象となる空間であり、個人界から間人界に至る世界である。

視聴者は、個人界から間人界への空間を体験することができる。

参加者は、個人界と間人界を体験したうえで、改めて個人界を構築することができる。 

③真摯・虚構軸

真摯・儀礼的な世界と虚構・遊戯的な世界を両端とする軸

当ブログで前後軸【前後軸が作る3つの生活願望】と名づけている軸で、【前後軸が作る3つの世界】と名づけていますが、この中にVRを位置づけると、次のような特性が浮かんできます。

VRの中に現れる世界は、虚構記号による虚構・遊戯界である。

視聴者虚構・遊戯界を体感できる。

参加者は虚構・遊戯界を体感したうえで、自らその界を動かすことができる。

以上のように、VRVirtual Reality:仮想現実)を使うと、私たち生活民は、認知・識知界を仮想的に構築したうえで、個人・間人界や虚構・遊戯界に対し、疑似的な体験や交流を行うことが可能になる、といえるでしょう。