ハイテクツールの3番めは、AR(Augmented Reality:拡張現実)を考えてみます。
前回のVR(Virtual Reality:仮想現実)は、ヘッドセットとヘッドフォンを通じて、バーチャルな世界でリアルに近い体験を提供するものでした。
これに対し、ARはスマートフォン、タブレット、メガネ(スマートグラス)などのモバイルデバイスを通じて、リアルな世界の映像を提供し、その上に新たな画像やテキストの情報を加え、映像世界の「拡張」をめざすものです。
例えば、スマフォのカメラで寿司を映すと、ネタの名前が明示され、スニーカーを映すと、値段、スペック、着用イメージ動画が再生されるなど、肉眼だけでは見えない情報が表示されます。
こうした機能を持つARですが、主に4つの形態があるようです。
●マーカー型・・・マーカーとして事前登録した画像や写真などと特徴点が一致すると、ARコンテンツ情報を自動的に表示する。 活用事例:イベント、商品・パッケージ、カタログやポスター、書籍・広報誌、店舗など。 ●GPS型・・・スマートフォンなどの位置情報をGPSで取得して、MAP系サービスなど、付近に設定された視覚情報を表示する。 活用事例:道案内サービス、ゴルフ場、建築物・建物、観光地案内など。 ●空間認識型・・・スマートフォンやタブレットの画面をユーザーがタップすることで、現実世界の空間(高低差、体積、奥行きなど)を認識し、関連した視覚情報を提供する。 活用事例:家具・家電の配置、製造業・建築業などの現場情報、ゲームやイベントの位置情報など。 ●物体認識型・・・スマートフォンやタブレットなどのカメラで、特定の三次元の立体物を、360度全方位から認識すると、その特徴点を解析して、関連する視覚情報を提供する。 活用事例:商品・パッケージ、おもちゃ・フィギュア・スケールモデル、製造業・産業機械・自動車などの現場情報など。 |
以上のようなARの4つのタイプを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の中に位置付けてみましょう。
①感覚・言語軸(縦軸)
●マーカー型・・・認知界に現れるイメージを識分けし、言知界や理知界に提供されるイメージとの差異を判断する。 ●GPS型・・・言知界に現れるイメージを言分けし、言知界や理知界に提供されるイメージとの差異を判断する。 ●空間認識型・・・識知界に現れたイメージを言分けして言知し、言知界や理知界に提供されるイメージとの対応を判断する。 ●物体認識型・・・モノ界に現れたイメージを識分けして認知したうえ、言分けして言知し、言知界や理知界に提供されるイメージとの対応を判断する。 |
②個人・社会軸(横軸)
●マーカー型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまなイメージと対応させ、必要な情報を提供する。 ●GPS型・・・ユーザーがパロール1として表すGPSを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、必要な情報を提供する。 ●空間認識型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、独自の使用を促す。 ●物体認識型・・・ユーザーがパロール1として表すイメージを、ラング内に用意された、さまざまな情報と対応させ、パロール2としての使用を促す。 |
③真実・虚構軸(前後軸)
●マーカー型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意されたイメージと一致すると、虚実混在した日常情報として提供される。 ●GPS型・・・虚像として提供するGPSが、事前に用意された情報と一致すると、虚実混在した日常情報として提供される。 ●空間認識型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意された虚構空間の中に位置付けられ、虚実混在から実像への判断を促す。 ●物体認識型・・・虚像として提供するイメージが、事前に用意された虚構空間の中に位置付けられ、実像へのさまざまな判断を促す。 |
以上のように見てくると、AR(拡張現実)とは、虚構イメージを基礎にしつつも、言知界や理知界へと働きかけ、パロール2(純個人的言語行動)を促すことによって、生活民の生活世界を拡大させる社会的装置だ、といえるのかもしれません。
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