ハイテクツールの4番めは、MR(Mixed Reality:複合現実)を考えてみます。
前々回のVR(Virtual Reality:仮想現実)は、仮想世界を現実世界として体験できる技術であり、VRゴーグルを被り手足にセンサーを装着して身体を動かせば、360度の仮想空間が楽しめます。
前回のAR(Augmented Reality:拡張現実)は、スマートフォン、タブレット、メガネ(スマートグラス)などのモバイルデバイスを通じて、リアルな世界の映像を提供し、その上に仮想画像やテキストなどの情報を加えて、映像世界の「拡張」をめざすものでした。
これらに対し、今回のMRはヘッドセットなどを通して、目の前の現実世界と、デジタルの映像や音声などが創る仮想世界を、リアルタイムで「複合」する技術であり、複数のユーザー間で共感することもできます。
以上のような特性を持つMRを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の中に位置付けてみましょう。
①感覚・言語軸(縦軸)
❶目の前に広がる世界は、環境世界から身分け・識分け・言分けされた現実事象である。 ❷現実世界の上に被さる仮想世界は、人工的に創られた仮想事象である。 ❸両者を掛け合わせて得られる幻像は、コト界では日常的な事象として把握され、ウチ界では思考事象として理解される。 |
②個人・社会軸(横軸)
❶現実事象と仮想現実が重なった複合現実は、複数のユーザーの間で共有される(パロール1次元)。 ❷現実事象と仮想現実が重なった複合現実を、1人のユーザーとして、さまざまに判断できる(パロール2次元)。 ❸現実事象と仮想現実が重なった複合現実は、社会的な事象にはなりえない(ラング次元) |
③真実・虚構軸(前後軸)
❶個人あるいは参加集団では、現実事象と仮想事象を重ねることが可能である。 ❷虚実混在した日常界にもかかわらず、現実事象と仮想事象を明確に分けて理解することができる。 ❸仮想事象をさまざまに変えることで、思考実験が可能となる。 |
以上のような特性を持っているとすれば、MRとは、個人あるいは特定集団において、頭脳内で行なわれている空間・音声的模擬思考を現実界に押しひろげ、体感的に共有できる思考へと導くもの、と位置づけられるでしょう。
生活民にとっては、パロール2としての活用が期待されます。
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