2023年5月18日木曜日

MRを生活民はいかに使いこなすか?

ハイテクツールの4番めは、MRMixed Reality:複合現実)を考えてみます。

前々回のVRVirtual Reality:仮想現実)は、仮想世界を現実世界として体験できる技術であり、VRゴーグルを被り手足にセンサーを装着して身体を動かせば、360度の仮想空間が楽しめます。

前回のARAugmented Reality:拡張現実)は、スマートフォン、タブレット、メガネ(スマートグラス)などのモバイルデバイスを通じて、リアルな世界の映像を提供し、その上に仮想画像やテキストなどの情報を加えて、映像世界の「拡張」をめざすものでした。

これらに対し、今回のMRはヘッドセットなどを通して、目の前の現実世界と、デジタルの映像や音声などが創る仮想世界を、リアルタイムで「複合」する技術であり、複数のユーザー間で共感することもできます。

以上のような特性を持つMRを、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の中に位置付けてみましょう。


①感覚・言語軸(縦軸)

❶目の前に広がる世界は、環境世界から身分け・識分け・言分けされた現実事象である。

❷現実世界の上に被さる仮想世界は、人工的に創られた仮想事象である。

❸両者を掛け合わせて得られる幻像は、コト界では日常的な事象として把握され、ウチ界では思考事象として理解される。


②個人・社会軸(横軸)



 

❶現実事象と仮想現実が重なった複合現実は、複数のユーザーの間で共有される(パロール1次元)

❷現実事象と仮想現実が重なった複合現実を、1人のユーザーとして、さまざまに判断できる(パロール2次元)

❸現実事象と仮想現実が重なった複合現実は、社会的な事象にはなりえない(ラング次元)


③真実・虚構軸(前後軸)



 

❶個人あるいは参加集団では、現実事象と仮想事象を重ねることが可能である。

❷虚実混在した日常界にもかかわらず、現実事象と仮想事象を明確に分けて理解することができる。

❸仮想事象をさまざまに変えることで、思考実験が可能となる。

以上のような特性を持っているとすれば、MRとは、個人あるいは特定集団において、頭脳内で行なわれている空間・音声的模擬思考を現実界に押しひろげ、体感的に共有できる思考へと導くもの、と位置づけられるでしょう。

生活民にとっては、パロール2としての活用が期待されます。

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