2018年12月20日木曜日

「差延化」行動の理論的背景を考える!

「差延化」行動の基盤となるのは、私たち人類に特有の言語活動です。

このことについては、当ブログでは何度も触れてきましたので、要点を整理しておきましょう。
 


言葉には「ラング(langue)の次元と「パロール(parole)次元がある。

言葉の機能には、民族や国家が共有している「ラング(langue)」の次元と、それを使って個人が会話を交わしたり、一人で思考するという「パロール(parole)」の次元がある。

ラングは、日本語、英語、フランス語など、それぞれの言語圏に属する人々が歴史的に共有している社会制度、共同主観であり、この制度の中では、文法と辞書で示されているように、一つの言葉の語義と用法が、共同体の伝統と慣習によって、一定の範囲に定められている。他方、パロールというのは、個々人がラングを使って実際に行なっている、私的な言語活動や思考行動である。


②「パロール」次元は「パロール1」次元と「パロール2」次元に分かれる。

パロールには、既成のラングに忠実に基づいて会話する「経験的使用」=パロール1と、ラングを使って全く新たな関係を作りだす「創造的使用」=パロール2の、2つのケースがある。他人との交流のためにラングを使用する行為は「パロールⅠ」であり、個人が私的にラングを使用して自らと会話する行為は「パロール2」である。

③「ラング」「パロール1」「パロール2」という言葉の3次元によって、単語の意味も「語義」「意味1」「意味2」に変わる。

言葉の示すイメージは、ラングでは「語義(signification)となり、パロールでは「意味(sensとなる。「語義」とは、一つの言葉が辞書や文法といったラング(langue)の中で使われる場合であり、「意味」とは、それが個人的なパロール(parole)の中で使われる場合である。

他人とコミュニケートするには、互いに意味や用法を共有している語義を使うのが便利であるが、私的なメモや日記、あるいは独創的な詩歌や創作を書くには、自分だけに通じる意味や用法も許される。

それゆえ、パロール1とパロール2では、個々の「言葉」の意味もまた変わる。パロール1では「語義」の比重が多い「意味1」となり、パロール2では独創的な内容の比重が濃い「意味2」となる。


―――以上は【横軸の構造・・・ラングとパロール】(2015年3月6日)や【言語学で「ねうち」と「ききめ」の違いを探る!】(2018年8月19日)による。


④言葉の「意味1」は道具の「効用1」に、「意味2」は「効用2」に相当する。

ラングとパロールの関係は、言葉の使用法の延長線上に生まれる、道具や食べ物などの使用法と連動する。

コト界で社会的な「語義」に従って話す「パロール(parole:会話)1」は、モノ界では社会的な「使用価値」に従ってモノを使う「ヰティリゼ(utiliser=使用)1」の「効用1」に対応する。他方、コト界で新たな「意味」を創造しながら話す「パロール2」は、モノ界で純個人的に独創的によってモノを使う「ヰティリゼ2」の「効用2」に相当する。


効用2=ききめ2を独創することで、「効用1=ききめ1」や、さらには「使用価値=ねうち」もまた変革できる

私たちは一つのモノを、一方では社会的な習慣や先例に基づく「効用1」つまり「ねうち」として使っているが、もう一方では自らの工夫やアイデアを加えた「効用2」としても使用することができ、その使用法が広がることによって、社会的な「効用1」を変革していくこともできる。

「効用=ききめ」とみなせば、「効用2=ききめ2」を独創することによって、「効用1=ききめ1」=「使用価値=ねうち」もまた変革できる。

―――以上は【社会的な「ねうち」と純私的な「ききめ」を峻別する! 】(2018年8月29日)による。

これまでに述べてきたように、「パロール2」と「意味2」、および「効用2」と「ききめ2」の関係こそ、「差延化」行動の理論的な基盤となっています。

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