言語3階層説を、具体的な「言葉」を素材にして考察しています。
前回の「波音(なみおと)」という音声言葉に続いて、今回は「赤色(あかいろ)」という色彩言葉をとりあげます。「あかつき」や「あかるみ」などで目にする、「あか:明」るい色ですが、もう一方では「赤血球」の「あか」もまた示しています。
それらの色を人間は、自らの視覚を使って「身分け」し、「日光」や「血色」など、モノ界の色彩イメージとして「認知」しています。
こうした色彩イメージを、人間はその意識機能を使って「識分け」し、日本人では「明るい」や「血の気」など、英国人では「light」「blood」などの視覚象徴、つまりモノコト界の「深層・象徴言語」として「識知」しています。
続いて人間は、これらの視覚象徴を、自らの言語能力によって「言分け」し、日本人では「赤色」「血まみれ」など、英国人では「red」「bloody」など、コト界の「日常・交信言語」に置き換えて「理知」し、会話や文通などの交信活動で使用しています。
この機能は広く社会へ拡大され、交通信号や火災報知機の表示灯などでは、赤色が停止や危険を示す交信記号として使われています。
さらに人間は、これらの交信言語を、「言分け」能力をより高度化した思考・観念能力によって、コト界の「思考・観念言語」に置き換え、文学活動、政治活動、科学研究などを行っています。
文学活動では、「朱色」「緋色」などの比喩的表現に置き換えることで、情熱、興奮、恋、危険などを表しています。 「朱色の唇細き壁の画をかすかに見上げ吐息すわれは」(井伏鱒二) 「奥庭やもみぢ蹴あぐる緋の袴」(正岡子規) また小説のタイトルとして、『朱色の研究』(有栖川有栖)や『緋色の囁き』(綾辻行人)などでも使われています。 政治活動では、赤旗をシンボルとすることから、赤色は共産主義を表しています。 科学研究では、日本工業規格(JIS)が一般色名として、色相50R、明度3.5~5.5、彩度9~13の範囲の色に、「赤」という色名をつけており、さまざまな研究活動や生産活動で使われています。 |
以上のように、「赤色」という視覚言葉を、言語3階層説から眺めて見ると、私たちの識知行動の成り立ちが朧気ながらも浮び上がってきます。
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