「Sustainable(持続可能な)」は、私たち人類の目標というには、あまりにも曖昧な言葉だ、と述べてきました。
何が曖昧なのか、実際の人口トレンドで考えてみましょう。
世界の人口は、今や大きな曲がり角にさしかかろうとしています。
国連の予測によると、【Sustainable・・・何のために“持続”するのか?】で述べたように、基本となる中位値では、2020年の109億人まで今後もなお増え続ける、とされています。
しかし、より厳しい条件で予測した低位値では、2050年前後の89億人がピークで、その後は徐々に減り始め、2100年に73億人となる、とされています。あと30年でピークが来るということです。
このためか、「2050年 世界人口大減少」とか「人類史上はじめて人口が減少し、いったん減少に転じると、二度と増えることはない」などいう、まことに近視眼的な曲説が堂々と出版されているほどです。
いうまでもなく人類は、3~4世紀には捕獲採集文明の限界化で約50万人(20%)の減少、14世紀後半には「黒死病」の影響などで約70万人(15%)の減少など、何度も減少を経験してきましたが、その後は再び増加傾向を取り戻しています。
それゆえ、昨今のコロナ禍もまた、世界人口にかなりの影響を及ぼすと思われます。
コロナ禍による死亡数の増加については、1,500万人から7,000万人までさまざまな予想が試みられていますが、間接的な影響を考えると、さらに増加して、数倍になることも考えられます。そうなると、人口ピークをかなり早める可能性もあります。
本格的な予測はまだ出されていませんが、アメリカのワシントン大学保健指標・評価研究所(Institute of Health Metrics and Evaluation: IHME)の予測チームが、2020年7月に国連予測とは異なる、新たな予測値を下図のように発表しています(a forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study)。
それによると、基本値では、世界の人口は2064年に97億人でピークに達し、2100年には88億人に減少する、と展望しています。国連の中位値より21億人ほど低い見通しです。
より厳しい代替シナリオ(SDGs値)では、2050年ころの88億人がピークで、2100年には63億人にまで減少する、ということです。国連の低位値より10億人少なく、これまでで最も低い予測値で、2000年の人口に戻るようです。
SDGs値では、その前提として、国連の「SDGs:Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」のうち、教育と避妊のための目標を満たすことが設定されています。
「我々の知見は、女性の教育向上と避妊実践の継続的なトレンドが、出生率の低下と人口増加の抑制をもたらすことを示唆している。・・・女性の生殖の健康を維持し、強化しながら、継続的な低出生率に適応するための政策オプションが、今後数年間で重要になってくる。」
つまり、Sustainableな対応は、出生率を低下させ、人口増加を抑制する、ということです。
否定的にいえば、SDGsとは、世界人口を「Sustainable(持続)」するものではなく、「Downsizing(低下)」させるのが目標である。あるいは、人類の暮らしを維持するために、人口を減少させるものである、ということでしょうか。
肯定的にいえば、SDGsとは環境負荷を強める人口を減少させることで、環境を「Sustainable(維持)」することである。あるいは、環境を「Sustainable(維持)」することで、減少していく人類のために、環境の「Condensing(濃密化)」をめざしている、ともいえるでしょう。
肯定的にいえば、SDGsとは環境負荷を強める人口を減少させることで、環境を「Sustainable(維持)」することである。あるいは、環境を「Sustainable(維持)」することで、減少していく人類のために、環境の「Condensing(濃密化)」をめざしている、ともいえるでしょう。
いずれにしろ、「Sustainable(持続)」とは、あまりにも多義的、もしく茫漠たる言葉といえるでしょう。