生活“民”マーケティング(Life Creators Marketing)とは、生活民の立場から「マーケット(市場)」へ働きかける行動を意味します。この「マーケット」、つまり「市場」とは何なのでしょうか。
人類史を振り返ると、古代社会の狩猟採集時代や農耕初期時代には、生活民の暮らしは自給自足が基本であり、その余剰分が贈与や共同体内で分配されていました。つまり、生活民にとっての生活資材とは、自分自身で獲得する対象であった、といえるでしょう。
ところが、時代が下るにつれ、他者との「交換」という獲得方法が広がってきました。これこそが「市場」という社会装置の基本です。
「いちば」とは「小売店が集まって常設の設備の中で、食料品や日用品を売る所」や「一定の商品を大量に卸売りする所」を、また「しじょう」とは「売り手と買い手とが特定の商品や証券などを取引する場所」を、それぞれ意味しています(デジタル大辞泉)。
社会装置としては、「いちば」が拡大することで、「しじょう」へ発展してきました。
狩猟採集社会(紀元前1万年前まで)では、余剰の食料や自作の道具などを物々交換する場所として始まり、古代社会(紀元前4000~2000年頃)になると、メソポタミア、エジプトなどでは定期的な交換場所として定まりました。
ヨーロッパの中世社会(5~15世紀頃)には、都市の拡大につれて定期市が開かれるようになり、近代社会(18~19世紀)になると、産業革命の進行とともに、大量生産・大量流通を担う商品市場が誕生し、貨幣経済の拡大に伴って、現代の市場社会が成立しました。
このように進展してきた「市場(いちば+しじょう)」に対し、生活民はどのように対応していくべきなのでしょうか。生活民マーケティングが対象にするのは、基本的には「いちば」ですが、延長線上では「しじょう」へも広がっていきます。
もともと「自給自足」が基本であった生活資源の獲得法が、知人間の「贈与」や共同体による「分配」、さらには宗教や王権による「再分配」などを経て、市場による「社会的交換」に移るにつれ、個々の生活民としてどのように対応すべきが問われるようになってきたのです。
これにより、現代社会の生活民は、自らの生活を構築するため、自己の労働で獲得した貨幣を差し出し、さまざまな生活資源を「市場」から獲得する、という生活構造に至っています。
とすれば、本来の「自給自足」と「贈与」「分配」「再分配」「交換」の間に、どのように対応していけばいいのか、とりわけ「自給自足」と「交換」の関係を適切に創り上げるにはどうすればいいのか、が問われることなります。
これこそが「生活民マーケティング」の基本的立場といえるでしょう。

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