2024年4月30日火曜日

生活世界構造を言語機能で考える!

生活意識や生活願望の発生源を、生活世界構造の3つの軸から考えてきました。

3つの軸によって、私たちの生活空間の全体が浮かび上がってきますので、これをうけて、生活学・新原論の3番めは、「生活世界構造」そのものについて考えていきます。

新原論の最も基本的な立場は、生活民の生きている空間が「言葉」によって作られているという視点です。

人間という生物は、言葉を持ったことにより、周りの環境世界を理解し、さまざまな形で対処していくことが可能になった、という立場からです。

言葉の持つ、基本的な特性を幾つかの機能に分けると、2番めの生活意識論で紹介したように、縦軸、横軸、前後軸の3つが浮かんできます。

①縦軸:感覚⇔観念の軸

生活心理を考える・・・意識としての生活世界構造】で述べたように、人間が言葉を使うようになったことで、意識の中に【身分け・識分け・言分け・網分け】の4分けが生まれ、それによって心の中には【ソト界(未知界)~モノ界(認知界)~モノコト界(識知界)~コト界(言知界)~アミ界(理知界)】の5つの心理的世界が生まれてきます。

それぞれの世界で使われる言葉もまた【言語6階層説】で述べたように、【深層言語・象徴言語・自然言語・交信言語・思考言語・観念言語】に分かれてきます。

大きな階層としてまとめると、【象徴言語・交信言語・観念言語】の3階層です。

②横軸:個人⇔社会の軸

横軸の構造】で述べたとおり、言葉という人工物が持っている、本質的な構造によって、【ラング界・パロール1界・パロール2界】の3つが生まれ、それによって生活空間には【社会界・間人界・個人界】が生まれてきます。

それぞれの世界で使われる言葉もまた【ラング・パロール1・パロール2】に分かれますので、言語階層としては【独考言語・日常言語・交流言語】の3つが浮かんできます。

③前後軸:真実⇔虚構の軸

前後軸が作る3つの生活願望】で述べましたが、言葉に潜んでいる【メタ・メッセージ】機能によって、言葉の示す空間は【真実界・曖昧界・虚構界】の3つに分かれてきます。

これに伴って、3つの世界で使われる言葉も【真言・常言・虚言】の3階層に分かれてきます。

言葉が創り出す、以上のような3つの軸によって、私たちの生活世界は図に示したような立体構造となっています。


この構造こそ、私たちの心理、願望、行動などが生まれてくる基盤だといえるでしょう。

2024年4月18日木曜日

生活心理・前後軸から考える!

生活心理が生まれる生活世界には、これまで述べた横軸縦軸に加え、前後軸が創り出す世界があります。

この世界から生まれる生活心理とは、どのようなものでしょうか。

前後軸については【コンデンシング・ライフ】で述べていますが、私たちの言語空間は、日常を超える超越的な「メタ・メッセージ」により、言葉の示すことを全く疑わないですべて真実とみなす「真実界」、逆に言葉の示すことはすべて虚構とみなす「虚構界」、2つの狭間にあって真偽が曖昧なままの「日常界」、の3つに大別できます。

真実界(儀礼界)・・・言葉の示すことを全く疑わないで、すべてを真実とみなすメタ・メッセージの場。キーワードは真実、儀礼、儀式、緊張、勤勉、学習、訓練、節約、貯蓄など。

日常界・・・真実と虚構の二つの空間の狭間にあって、虚実の入り混じった場。日常の空間。キーワードは普段、平常、平生、常日頃、日々など。

虚構界(遊戯界)・・・言葉の示すことはすべて虚構とみなしたうえで、その嘘を楽しむメタ・メッセージの場。キーワードは虚構、遊戯、弛緩、怠惰、遊興、放蕩、浪費、蕩尽など。

これら3つの生活世界では、それぞれキーワードに示したような生活行動が営まれています。

それゆえ、3つの世界の行動を促す生活願望としては、真欲(真実欲)常欲(日常欲)虚欲(虚構欲)の、3つを想定することができます。

真欲(真実願望)・・・真実界から生まれる願望であり、真実、儀礼、緊張、勤勉、学習、訓練、節約、貯蓄などを求めるもの。虚実をともに示す言葉の機能のうち、個々の言葉の意味とその対象の厳密な一致をめざそうとする願望であり、言葉の示すものを目標にして、自らの行動を厳しく律していこうとする。

社会的行動では儀式や儀礼、私的な生活行動では勤勉や学習、経済的行動では節約や貯蓄などがこれに該当する。

❷常欲(日常願望)・・・真実と虚構、儀礼と遊戯、緊張と弛緩の間で、絶えず揺らめきつつ、営まれている日常界の中から生まれてくる願望。毎日の暮らしを実現していく、最も基本的な動機となって、現実的、具体的な性格を帯びている。

虚欲(虚構願望)・・・虚構界から生まれる願望であり、虚構、遊戯、弛緩、怠惰、遊興、放蕩、浪費、蕩尽などを求めるもの。個々の言葉の意味とその対象の関係を積極的にずらしていこうとする願望であり、言葉の示す目標を意識的に緩めて、自らの行動をあえて弛緩させ、遊びや解放を味わおうとする。

社会的行動では遊戯や遊興、個人的な生活行動では弛緩や怠惰、経済的行動では浪費や蕩尽などが該当する。

以上のように、生活世界の前後軸には真実界、日常界、虚構界が潜み、それぞれの内部から、真欲、常欲、虚欲の3つの生活願望が生まれてきます。