ハイテクツールの7番めは、デジタルツイン(Digital twin)を取り上げます。
デジタルツインとは、リアルな空間から収集したデータを基に、デジタルな空間の中へ、ほとんど同じ状況を、まるで双子(Twin)のように再現する技術を意味しています。
データはリアルタイムで更新されますので、ユーザーはデジタル空間の中で、シミュレーション、機械学習、思考実験などを行い、さまざまな意思決定を試みることができます。
このため、デジタルツインの活用は、幅広い分野や対象で進んでいます。
とりわけ、都市計画や建築設計、製品企画や用途設計など、物質的な計画や設計、新商品の製造・運用・アフターフォローといった分野で、シミュレーション用具として活用されています。
最近ではさらに発想を広げ、一人暮らしの高齢者のために、パートナー用のデジタルツイン機器も検討されています。
高齢化の急進で増加する高齢単身者が、無類の相棒として自由に付き合っていけるうえ、
認知機能が低下したり、意思表明が難しくなった時には、その人の代理人として、それまで何を考え、何を希望していたかを関係者に伝えることもできるようです。
このようなデジタルツインの可能性を、私たち生活民の生活構造(「生活体」の3つの軸)の立場から展望しておきましょう。
①感覚・言語軸(縦軸)
❶生活民であるユーザーは、自らが識分け・言分け・識分けした、さまざまなデータをデジタル・アバターの元へ、リアルタイムで送り込んでいる。 ❷ユーザーは、デジタル・アバターとなっているユーザー自身と、必要に応じて語り合うことができる。 ❸ユーザーは、仮想空間内のデジタル・アバターに蓄積された、さまざまなデータを、リアルデータとして利用できる。 |
②個人・社会軸(横軸)
❶デジタルツインの作り出す言語空間は、ラングからパロール1を経てパロール2に及ぶ。 ❷ユーザーは、デジタル・アバターと自由に会話できる。 ❸ユーザーは、デジタル・アバターの差し出す情報をリアルデータとして活用できる。 ❹ユーザーは、デジタル・アバターとの間で、パロール2としてて会話できる。 |
③真実・虚構軸(前後軸)
❶デジタルツインの提供する仮想空間は、あくまでも虚構空間である。 ❷虚構空間を前提に、ユーザーはデジタル・アバターの言動を、あくまでも虚実曖昧事象として対応することができる。 ❸ユーザーは、虚実曖昧の中から真実事象を拾い出し、リアルデータ化することもできる。 |
以上のような特性から考えると、デジタルツインというハイテクツールは、土木・建築や商品開発・機能設計などの次元を大きく超えて、生活民の人生そのものを多角・多面化していく可能性も秘めている、といえるでしょう。
他方では、長寿化でますます情報過多となる人生を、いっそう複雑にしていく、という危惧も浮上してきます。