思考・観念言語における文字言語【思考・観念言語は地縁共同体から“理”縁共同体へ!】の位置を考えています。
文字言語には、数字・計算文字、漢字、専門文字などがありますが、今回は専門文字の一例として楽譜文字、つまり「音符」について考えてみます。
現代社会で使われている楽譜文字では、♩(四分音符)、♪(八分音符)、♫(連桁付き八分音符)、♬(連桁付き一六分音符)、♯(シャープ)、♭(フラット)などです。
歴史的に見ると、これらの楽譜文字は、13世紀後半のヨーロッパで、音符の長さを指定する三分割法や二分割法として生み出され、14世紀以降、音符の形が四角形、あるいは菱形に統一されました。
15世紀中頃までは4分音符のような黒塗り型が使われ、その後は全音符や2分音符のような白抜き型が生まれましたが、次第に記譜法が統一されて、現在に近い形になりました。
16世紀に印刷技術が登場すると、世界中に楽譜が広まるようになり、記譜法も現在の形にほぼ近い形に変わりました。そして、17世紀後半に至って、楽譜文字は完全に現在の形になりました。
音楽に関わる共同体の中で、普遍的に通用するラング(言語)となったわけです。
このような音符を使って行う思考は、ピアノを前にした作曲や楽器の演奏を始める前の一瞬、頭の中でひとまず音の流れを思い浮かべる、という形で行われています。
それゆえ、他の文字言語はない、幾つかの特性があります。
●音符と記号の差 音符は音の高低や音色という意味(シニフィアン)や、リズムやテンポなどの文法(シンタックス)を表している点で、特定の意味だけをシニフィエする「記号」とは異なっています。 記号が特定の意味をシンボライズしているのに対し、音符は特定の流れの中で現れる音響を示している、ともいえるでしょう。 ●聴覚のみの文字言語 音符は、頭の中で音声や歌唱、楽器の音色や繋がりなどを想定する点で、音声言語や文字言語による思考よりも、いっそう直観的な文字言語です。 音声言語や文字言語が五覚(視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚)の全てをシニフィエしているのに対し、音符は聴覚のみを指し示す言語であるからです。 ●モノ界に近い文字言語 音符のサインは、数字・計算文字や漢字などに比べ、より身分け次元に近いモノを示しています。 数字・計算文字や漢字などが、主にコト界の識知対象を示すのに対し、音符文字の示すサインは、聴覚のみを示すことで、日常・交信言語の次元を超えて、深層・象徴言語に近い識知対象を表しているからです。 |
以上のように、楽譜文字もまた、厳格なサインやシンタックスを表していますから、これらに基づいて脳内で歌唱や演奏を試みる場合には、その仕組みを十分に理解する集団、いわば“楽”縁共同体に加入することが必要になるでしょう。
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