言語3階層(思考・観念言語、日常・交信言語、深層・象徴言語)は、言語形態(音声言語、文字言語、表象記号)と密接に絡み合いながら、生活世界構造へ関わっている、と述べてきました。どのように関わっているのか、階層別に考えていきます。
まずは深層・象徴言語。
擬声語は、ワンワン、コケコッコー、オギャー、ゲラゲラ、ペチャクチャなど、人間や動物の声を表現する言葉。 また擬音語は、ザアザア、ガチャン、ゴロゴロ、バターン、ドンドンなど、自然界の音や物音を表す言葉、とそれぞれ定義されています。 両方とも、「身分け」がとらえ、「識分け」が意識した、さまざまな音波を、最も近いと思われる「音声」で表現したもので、言葉の原点、言語の萌芽ともいえる階層です。 記号論的に言えば、さまざまな音をシニフィエ(Sé=意味されるもの=対象)とし、その音に【最も近い音声】をシニフィアン(Sa=意味するもの=記号)として接合した言語、といえるでしょう。 擬声語・擬音語=Sé /Sa=さまざまな音波/最も近い音声 |
●擬態語・擬容語
擬態語は、キラキラ、ツルツル、サラッと、グチャグチャ、ドンヨリなど、無生物の状態を表す言葉。 また擬容語は、ウロウロ、フラリ、グングン、バタバタ、ノロノロ、ボウっとなど、生物の状態を表す言葉です。 両方とも、「身分け」が捉え、「識分け」が意識した、何らかの動きや様子を表すもので、聴覚的な音声ではなく、視覚・触覚的な「意識」を象徴的な「音声」で表現したもので、モノを表現する写実的言語の萌芽といえる階層です。 記号論的に言えば、意識が捉えた、さまざまな感覚状態をシニフィエとし、それに類似した音声をシニフィアンとして接合した言語です。 擬態語・擬容語=Sé /Sa=さまざまな感覚状態/類似した音声 |
●擬情語
イライラ、ウットリ、ドキリ、ズキズキ、シンミリ、ワクワクなど、人間の心理状態、痛みや快さなどの感覚を表す言葉です。 「身分け」が捉え、「識分け」が意識した、感覚や感情の動きを、聴覚的な音声ではなく、象徴的な「音声」で表現したもので、情意的な言語の萌芽ともいえる階層です。 記号論的に言えば、識分けが捉えた、さまざまな心理状態をシニフィエとし、その状態を表現しようとする音声をシニフィアンとして接合した言語です。 擬情語=Sé /Sa=さまざまな心理状態/表現しようとする音声 |
このように見てくると、深層・象徴言語は、同一の言葉を使う語族ごとに、言葉の成り立ちや意味が異なってくるという事実を示しているようです。
擬声語でいえば、「ワンワン:日本語族」は、「bow-wow:英語族」、「toutou:フランス語族」、「wáng yī:中国語族」、「gos wau:アラビア語族」、「yay-vay:トルコ語族」など、それぞれ異なっています。
また擬容語では、「バタバタ:日本語族」は、「flap:英語族」、「battre:フランス語族」、「plap:韓国語族」、「reveref:アラビア語族」、「solapa:スペイン語族」など、さまざまな音声化が行われています。
このことは、民族の音声感覚によって、言葉の基盤が形成されていることを示しています。
民族毎に異なってくる言語アラヤ識の基盤は、こうした深層言語の構造に潜んでいるのではないでしょうか。