パロール2は極めてマイナーな用法ですが、それでも社会的に流布し集積させることで、やがてはラングそのものを変革していくこともできます。
こうした関係は、言葉の使用法の延長線上に生まれる、道具や食べ物などの使用法と当然連動していますから、下図に示したような対応が成り立ちます。
どのような対応なのか、説明しておきまましょう。
①言語(ランガージュ:language)で作られた「コト界」と道具(ヰセージュ:usage)が通用している「モノ界」は上下に対応しています。
②コト界で社会的な「語義」に従って話す「パロール(parole:会話)1」は、モノ界では社会的な「使用価値」に従ってモノの「効用1」を使う「ヰティリゼ(utiliser=使用)1」に対応します。
③コト界で新たな「意味」を創造しながら話す「パロール2」は、モノ界で純個人的に独創的な「効用2」によってモノを使う「ヰティリゼ2」に、それぞれ相当します。
②コト界で社会的な「語義」に従って話す「パロール(parole:会話)1」は、モノ界では社会的な「使用価値」に従ってモノの「効用1」を使う「ヰティリゼ(utiliser=使用)1」に対応します。
③コト界で新たな「意味」を創造しながら話す「パロール2」は、モノ界で純個人的に独創的な「効用2」によってモノを使う「ヰティリゼ2」に、それぞれ相当します。
以上のような対応によって、パロール1における「意味1」とパロール2における「意味2」の関係は、「ヰティリゼ1」における「効用1」と「ヰティリゼ2」における「効用2」の関係に変換できます。
つまり、私たちは一つのモノを、一方では社会的な習慣や先例に基づく「効用1」、つまり「ねうち」として使っています。
しかし、もう一方で、私たちは自らの工夫やアイデアを加えた「効用2」としても使用することができ、その使用法が広がることによって、社会的な「効用1」を変革していくこともできる、ということです。
「効用=ききめ」とみなせば、「効用2=ききめ2」を独創することによって、「効用1=ききめ1」=「使用価値=ねうち」もまた変革できることを意味しています。
以上のように、言語学、とりわけソシュールの言語学を応用すると、モノに関わる3つの評価、つまり社会的な「使用価値=ねうち」や「交換価値=あたひ」と純私的な「効用1=ききめ1」や「効用2=ききめ2」の関係を明確に表すことができます。
同時に、大和言葉における「ねうち」「あたひ」「ききめ」の違いもまた、明らかにすることもできるでしょう。