2024年12月24日火曜日

生活学・新原論Ⅴ-7:差識化行動とは何か?

生活行動論の7番めは「差識化」行動です。

差識化とは、【生活学・新原論Ⅴ:生活行動…7つを考える!】で述べたように、生活世界の中央の「日欲」を構成する3つの生活願望、つまり「欲求」「実欲」「常欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動です。

これまで6つの生活行動を、【生活体マンダラ・立方界を提案する!】で述べた、3つの願望の軸、つまり【欲望・欲求・欲動】【私欲・実欲・世欲】【真欲・常欲・虚欲】をクロスさせた、3×3×3の立方体で説明してきました。

このうち、差異化行動は上部の、差元化行動は下部の、差延化行動は左側の、差汎化行動は右側の、差真化行動は奥側の、差戯化行動は前側の、それぞれ9つの行動を26の行動にまとめて考察してきました。

となると、9×3=27からマイナス1、丁度ど真ん中に当たる立方体の部分だけが残っています。


この空間こそ、私たち人間が日常的な生活を営んでいる中心領域であり、【
生活学・新原論Ⅴ:生活行動…7つを考える!】で述べたように、「日欲」という生活願望に基づいて、さまざまな行動が生まれている次元です。

これらの行動を「差識化」行動と名づけますが、差識化とは上記で述べたように、「欲求」「実欲」「常欲」が“認識”する、さまざまな有用性の中から、個人的に必要な「ききめ」を判断し、それらを求める生活行動といえるでしょう。

それゆえ、差識化行動は【生活願望・3つの軸から生まれる】で解説した【欲求・実欲・常欲】の3つの願望の内容を前提にすると、次のように説明できます。

➀欲求行動・・・無意識的な次元の動物的、衝動的な「欲動」と、さまざまな「記号」の刺激から生まれる「欲望」の間に合って、生理的、生物学的な不足状態を解消しようとする生活行動です。

例えば、咽喉が乾いたから水を飲む、腹が空いたからパンを食う、寒くなったからコートを着るなど、一人ひとりの身体の中で「欠如」してくるものを補おうとする生活行動です。

➁実欲行動・・・・世間的な評価を手に入れたいと思う「世欲」と、他人にどういわれようと純私的に満足したいと思う「私欲」の間で、家事、就業、寝食など日常的な生活の中に、実効的な効果や成果を得ようとする生活行動です。

例えば、炊事、洗濯、掃除、作業、業務活動など、社会的名望や純私的な満足を遠ざけた生活行動をさします。

➂常欲行動・・・言葉の示す目標へ自らを律する「真欲」と、目標を緩めて遊びや解放を味わう「虚欲」の間に合って、虚実を振り分けつつ日々の暮らしを実現しようとする生活行動です。

例えば、日常的な生活習慣で暮らすこと、曖昧な言葉遣いを気にせず会話することなど、厳しさも面白さもスルーする生活行動です。

以上に挙げた3行動、つまり「欲求」「実欲」「常欲」を求める、さまざまな行動が多様にミックスした次元、これこそ、私たちが日常的に営んでいる生活行動の実態といえるでしょう。

2024年12月16日月曜日

カイヨワの4類型を超えて!

差戯化行動、つまり「遊び」行動については、フランスの社会学者、.カイヨワが『遊びと人間』の中で提案した「遊びの4類型」が、関連学会などでは定番となっています。

彼によれば、遊びの本質は「パイディア(Pidia:ギリシャ語=遊戯、快楽)」と「ルドゥス(Ludus:ラテン語=闘技、試合)」にあります。

パイディア(Pidia)とは、気晴らし、騒ぎ、即興、無邪気な発散といった共通の原理が、ほとんど例外なしに支配している遊びの世界です。

ルドゥス(Ludus)とは、恣意的だが強制的でことさら窮屈な規約に従わせ、一層の努力、忍耐、技、器用がなければ目標に到達できない遊びの世界です。

パイディアの軸を意志から脱意識へ、ルドゥスの軸を規則から脱規則へとして、上下に位置付けたうえで、さまざまに展開される「遊び」を、下図のような4類型として整理しています。


アゴン(Agon:ギリシャ語=競技、試合)・・・競争という形をとる一群の遊び。例:サッカー、ボクシング、子どものかけっこなど競技、マージャン、チェスなどのゲーム。

アレア(Alea:ラテン語=さいころ、賭け)・・・遊戯者の力の及ばぬ独立の決定で成りたつ、全ての遊び。例:くじ、じゃんけん、パチンコなどの賭博。

ミミクリ(Mimicry:英語=真似、模倣)・・・参加者がその人格を一時的に忘れ、偽装し、捨て去り、別の人格をよそおう遊び。例:演劇、物真似、仮装、ごっこ遊び、組み立て遊びなど。

イリンクス(Ilinx:ギリシャ語=渦巻、めまい)・・・めまいを求める、さまざまな遊び。メリーゴーランド、ブランコ、スキー、サーカスなど。

このような4類型を、当ブログで展開している差戯化行動として、再分類してみましょう。

生活世界構造において、パイディアの【意志⇔脱意識】を【言語⇔感覚】軸、ルドゥスの【規則⇔脱規則】を【社会⇔個人】軸とみなして、差戯化行動の9分野に位置づけてみると、概ね下図のようなります。


【アゴン:競争】は【世欲・虚欲・欲望】に、【アレア:偶然】は【世欲・虚欲・欲求】に、【ミミクリ:模倣】は【私欲・虚欲・欲求】に、【イリンクス:めまい】は【私欲・虚欲・欲動】に概ね相当しています。

とすれば、【私欲・虚欲・欲望】と【世欲・虚欲・欲動】の分野に、まだまだ新たな類型が潜んでいる可能性が見えてきます。

例えば、私欲・虚欲・欲望行動では【私戯:ホビ=Hobbie=ギリシャ語】として、独りで楽しむ言語的遊び、つまり一人替え歌、スマホゲームなどが浮かんできます。頭の中だけで考える漢字遊び、数式解読、俳句創りなども基本となるでしょう。

また世欲・虚欲・欲動行動では【集眩:マニア=mania=ラテン語】として、集団で楽しむ感覚的遊び、例えば祭や集団イベント時の熱狂行動、といったものです。

青森ねぶた祭りの「はねと」踊り、阿波おどりの「にわか連」、山形花笠まつりの「飛び入りコーナー」などでは、感覚の深部において解放感を味わえます。

以上のように、新たな生活行動論の視点に立つと、「遊び」という行動にも、カイヨワの4類型を越えて、新たな6類型が浮上してきます。