生活学・新原論の3番めのテーマとして、「言語」をベースとする生活世界構造を、3つの軸から考えてきました。
今回からは、4番めのテーマとして、生活民が心に抱く、さまざまな願望、つまり「生活願望」の構造を、やはり3つの軸から考えてみます。
すでに前回までの生活世界構造論で、横軸、前後軸については触れていますので、それらを要約したうえ、縦軸を加えて、生活願望の全体図を描いてみましょう。
横軸・・・【生活心理を横軸で考える!】で示したように、3つの願望が生まれてきます。
言語構造の横軸は【ラング⇔パロール1⇔パロール2】で構成され、【社会界⇔間人界⇔個人界】の3つの世界を創り出しています。この3世界から生まれる生活願望が【世欲⇔実欲⇔私欲】の3つです(横軸が作る3つの生活願望・・・世欲・実欲・私欲)。 ●世欲・・・社会的な地位や経済的な成功など、世間的な評価を手に入れたいと思う生活願望 ●実欲・・・家事、就業、勉強など日常的な生活の中で、実効的な効果や成果を得たいと思う生活願望 ●私欲・・・自省や内省など自分自身との交信の中で、他人に何といわれようとも、純私的に満足したいと思う生活願望 |
前後軸・・・【生活心理・前後軸から考える!】で述べたように、3つの願望が生まれてきます。
言語構造の前後軸は【言葉は真実⇔言葉は曖昧⇔言葉は虚構】で構成され、【真実界⇔日常界⇔虚構界】の3つの世界を創り出しています。この3世界から生まれる生活願望が【真欲⇔常欲⇔虚欲】の3つです。 ●真欲・・・言葉の示すものを目標に、自らの行動を厳しく律していこうとする生活願望。 ●常欲・・・真実と虚構が揺らめく日常界で、両者を振り分けつつ、日々の暮らしを実現しようとする生活願望。 ●虚欲・・・言葉の示す目標を緩め、自らも弛緩させて、遊びや解放を味わおうとする生活願望。 |
縦軸・・・【生活心理を考える・・・意識としての生活世界構造】で示したように、3つの願望が潜んでいます。
言語構造の縦軸は【身分け⇔識分け⇔言分け】で構成され、【モノ界⇔モノコト界⇔コト界】の3つの世界を創り出しています。この3世界から生まれる生活願望が【欲動⇔欲求⇔欲望】の3つです。 ●欲動(drive)・・・意識の下の無意識的な次元で、生死の区別や善悪の分割など日常的な評価基準をはるかに超えた、動物的、衝動的な生活願望。 ●欲求(want)・・・のどが乾いたから水が欲しい、空腹を覚えたから食べ物が欲しい、寒くなったから衣類が欲しいなど、生理的、生物学的な不足状態を意識がとらえた生活願望。 ●欲望(desire)・・・雑誌で見た車が欲しい、テレビで見たファッションが着たいなど、人間が言葉を持ったが故に、「記号」の刺激を受けて、誘導的に生まれてくる生活願望。 |
3つの軸に現れた生活願望を纏めてみると、【生活世界の言語構造】の図が、下図のような【生活願望の7球】として描くことができます。
中央の球、つまり日常的な世界では、欲求、実欲、常欲の3つが重なっていますので、これらを纏めて、「日欲(日常欲)」と名づけました。
日欲とは、欲求をベースに実効性や虚実を共に求める願望、ともいえるでしょう。
以上のように整理すると、私たちの生活願望は、図に示したような、7つの球で表現できます。
なお、生活願望の全体図については【七つの生活願望とは何か?】でも、詳述しています。