言語3階層(思考・観念言語、日常・交信言語、深層・象徴言語)と、言語形態(音声言語、文字言語、表象記号)の関係を考えています。
深層・象徴言語に続いて、今回は日常・交信言語、つまり人類が互いにコトを交し合う言葉について検討します。
日常・交信言語とは、【生活世界と言語3階層の関係を探る!】で述べたように、「識分け」で識知されたモノコトを、「言分け」によってコト界のコトに転換し、「話す」あるいは「書く」行動として使われている言葉です。
実例としては、音声言語(口頭語、会話語、交信語など)、文字言語(表音文字、文書文字など)、表象記号(絵文字、文字記号、音声記号、交通標識、鉄道信号など)が相当します。
これらの言語によって、話し手と受け手の間でコト(情報)交換が可能になるのは、その記号体系が「言語共同体」ともよぶべき集団において、予め共有されているからです。
「言語共同体」という用語については、一部の言語研究者の間で「曖昧」だとか「規制的」などと、まことに的外れな議論が盛んですが、当ブログでは社会学的な視点に立って、次のように考えています。
①ある地域に生まれ育った人間は、その地域で流布している言語体系を、意識、無意識を問わず身に着けることで、互いの意思交換を行えるようなる。 ②その言語体系は、地域住民の間で創り出され、かつ伝統的に継承されている。 ③一つの言語体系を共有する住民の集まり、つまり地域集団は同じ言語体系を共有する言語共同体とよぶことができる。 |
このような言語共同体で共有される言語体系の要素は、3つあります。
❶音声や文字などの記号が意味するもの(シニフィアン)と意味される対象(シニフィエ)の結びつき、つまり、言葉とその意味が共有されている。 ❷音声や文字などの繋がり方が、一定のシンタックス(統辞関係)、つまり文法として共有されている。 ❸記号の意味と記号間の繋がりの両方が、一定の言語体系(ラング)として、共同体の内部で共有されている。 |
以上のようなラングにおける日常・交信言語の実態を、音声言語、文字言語、表象記号の順に確認しておきましょう。
●音声言語 音声を使う言語行動(パロール)は、口頭語では話し手の識知を自ら理知として確認し、会話語では会話によって話し手と受け手の間で理知を交換し合い、交信語では話し手自身がその音声で多くの受け手に向けて、自らの理知が発信されています。 ●文字言語 文字を使うパロールは、表音文字では書き手が音声を表す文字を、文書文字では書き手が表意文字をそれぞれ使って、自分自身、あるいは受け手との間で理知を交換されています。 ●表象記号 文字以外の記号を使うパロールは、絵文字、文字記号、音声記号などでは発信者が共同体で共有されている視覚記号を使って、特定あるいは非特定の受信者に向けて、自らの理知を発信し、交通標識や鉄道信号などの公共的記号では、特定の共同体の参加者自身が、共同体で共有されている理知体系を使って、それぞれ受発信されています。 |
こうしてみると、日常・交信言語における言語とは、言語共同体に蓄積された言語体系(ラング)を前提に、個々人の言語行動(パロール)で使用されるもの、ということができるでしょう。
当たり前の話ですが、次に展開する思考・観念言語の構造にとって、大前提となる識知ですから、敢えて論述しました。
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