前回述べたように、ある時代、ある国で人間が生存できる人口容量は、さまざまな動物の事例を基礎としつつ、人類独自の生存条件によって、その構成が決まってきます。
動物の場合は、食糧獲得量、接触密度、排泄物濃度などが絡まって、「キャリング・キャパシティー(Carrying Capacity:生存容量)」の上限を造られており、これに応じて、個数当たり容量の内容も決まります。
人間の場合も、衣食住の生活水準、経済水準、環境水準などの複合条件が、「人口容量(Population Capacity)」の上限を形成していますので、それらに応じて、個人容量(=生活水準)の中身も決まります。
もし人口容量が一定であれば、一人当たりの個人容量が高まると、人口ピークは早くなり、逆に個人容量が下がると、人口ピークは遅くなります。
人口容量が変動する場合には、容量が上がっても、個人容量が高ければ、人口ピークは早く到来し、逆に容量が下がっても、個人容量が低ければ、人口ピークは遅延します。
現代日本の推移を振り返ってみましょう。
1950~60年代には、人口容量は未だ低かったのですが、さらに伸び続けており、1人当たりの個人容量もかなり低かったため、人口抑制装置を作動させることなく、人口は急増していました。 しかし、1990~2000年代になると、人口容量の拡大がほぼ限界に近づいているのに、個人容量は継続的に高まっていたため、間もなく人口抑制装置が作動して、人口を減少させることになりました。 |
人口抑制装置には、増加を抑える行動と減少を促す行動があり、容量が限界に使づくにつれて、平行して作動します。
下表は筆者の「人減ブログ」から引用したものですが、この装置は次のような構造を持っています。もう一度整理しておきましょう。
①抑制装置には、増加抑制と減少促進の両面があり、それぞれが生物・生理的装置と人為・文化的装置に大別される。 ②増加抑制装置には、生物・生理的な抑制装置と人為・文化的な抑制装置があり、後者は直接的抑制(妊娠抑制、出産抑制など)、間接的抑制(生活圧迫、結婚抑制、家族縮小、都市化、社会的頽廃化など)、政策的抑制(強制的出産抑制、出産増加への不介入など)の3面で作動する。 ③減少促進装置にも、生物・生理的な促進装置と人為・文化的な促進装置があり、後者は直接的促進(集団自殺、環境悪化や死亡増加への不介入など)、間接的促進(飽食・過食による病気の増加、生活習慣病の増加、都市環境悪化など)、政策的促進(老人遺棄、棄民、戦争など)の3面で作動する。 |
それゆえ、人口容量の上限が迫ってくると、生活民の生活意識にも、これらの影響が現れてきます。とりわけ影響が大きいのは、間接的な抑制・促進装置とそれに連動した直接的な抑制・促進装置の作動でしょう。
①間接的な抑制装置が、人口容量の逼迫による生活圧迫で、結婚を抑制して家族を縮小させ、都市化に伴う社会的頽廃化などで出産数を抑制する一方、間接的な促進装置は、人口拡大末期の飽食・過食による生活習慣病の増加や都市環境の悪化などで死亡数を増加させる。 ②直接的な促進装置でも、妊娠抑制や出産抑制などで出産数が抑制される一方、自殺の増加や環境悪化による死者の漸増などで死亡数を増加させる。 |
こうした社会環境が、先に述べたような生活意識を生み出すことになります。
①自己防衛意識の上昇・・・人口容量の伸びが止まった時、人口がなお増え続けていると、生活民1人あたりの個人容量は当然減ってくるから、生活民はまず自己防衛に走り出す。 ②対抗・攻撃性の上昇・・・人口容量の分配をめぐって、生活民は他人との関係に敏感になり、それは家族や子孫に対しても及んでいく。 |
とすれば、限界時代の生活意識を考えるには、まずはこの構造の理解から入らなければなりません。