2020年3月30日月曜日

「もの」と「こと」はどう違うのか?

物語マーケティング」とは何なのか。私たち日本人にとって「ものがたり」とはいかなるものなのか。「もの+がたり」があって、「こと+がたり」がないのはなぜなのか。

それを考えるため、「もの+がたり」の「もの」とは何なのか、「こと」と比較しつつ考えてみようと思います。

大和言葉における「もの」と「こと」はどのように違うのでしょうか?

岩波古語辞典(1974年版)では、両者の違いを次のように述べています。・・・要旨

もの【物・者】・・・形があって手に触れることができる物体を初めとして、広く出来事一般まで、人間が対象として感知・認識しうるものすべて
●コトが時間の経過とともに進行する行為をいうのが原義であるに対して、モノは推移変動の観念を含まない。むしろ、変動のない対象の意から転じて、既定の事実、避けがたいさだめ、不変の慣習・法則の意を表わす。


こと【言・事】・・・古代社会では口に出したコト(言)は、そのままコ卜(事実・事柄)を意味したし.またコ卜(出来事・行為)は.そのままコ卜(言)として表現されると信じられていた。それで、言と事とは未分化で、両方ともコトという一つの単語で把握された。従って奈良・平安時代のコ卜の中にも、言の意か事の意か.よく区別できないものがある。
●しかし、言と事とが観念の中で次第に分離される奈良時代以後に至ると.コ卜(言)はコトバ・コトノハといわれることが多くなり、コト(事)とは別になった。
●コト(事)は、人と人、人と物とのかかわり合いによって、時間的に展開・進行する出来事、事件などをいう。時間的に不変の存在をモノという。
●後世コトとモノとは、形式的に使われるようになって混同する場合も生じて来た。

要約すると、次のようになります。

もの」=【人間が感知・認識しうる対象】+【時間的推移・変動しない

こと」=【人間が感知・認識しうる対象】+【時間的推移・変動する

このような違いは、現代日本語では、どのように変わってきているのでしょうか。



広辞苑(第六版:2008年) では、次のように述べられています。・・・要旨

もの【物】・・・形のある物体をはじめとして、存在の感知できる対象。また、対象を特定の言葉で指し示さず、漠然ととらえて表現するのにも用いる。
事例:①物体・物品、②物のけ、③物事、④世間一般の事柄、⑤取り立てて言うべきほどのこと、⑥動作・作用・心情の対象となる事柄を漠然と示す語。
もの【者】・・・①(修飾語を伴って)…である人。②(代名詞的に)あいつ。③(漢文訓読の文脈で)事。

こと【言】・・・「事」と同源。事例:①ことば、②ものいい。③評判、④和歌。
こと【事】・・・「こと(言)」と同語。意識・思考の対象のうち、具象的・空間的でなく、抽象的に考えられるもの。「もの」に対する。

要約すれば、次の通りです。

もの」=【人間が感知・認識しうる対象】+【具象的・空間的な対象

こと」=【人間が感知・認識しうる対象】+【抽象的に考えられる対象

以上の推移かなり大きな変化のように思われますが、哲学者の方々はどのように見ておられるのでしょうか。

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