2020年3月18日水曜日

生活民は物語を求めるのか?

「アンチ・ブランド論」が一区切りしましたので、今回から次のテーマ「アンチ・ストーリー」論へ進んでいきます。

昨今のマーケティングの世界では、「物語マーケティング」や「Story Marketing」がますます重要な戦略になってきた、という認識が急増しています。

とりわけ急進するネット社会では、いかに「質の高い物語」を提供するか、マーケティングの成否を決める、などという意見も登場しています。

しかし、消費者ならばともかくも、生活民という主体となると、果たして物語やストーリーを求めているのでしょうか

生活民という視点から、根源的な次元に立ち戻って、物語の意味や効用を考えていきたいと思います。

「物語」つまり「ものがたり」とは、一体何なのでしょうか。

大和言葉では「もの」を「かたる」ことですが、この点については、語源辞典や語源由来サイトなどで、次のような解説が行われています。


●物語とは「ある事柄について話すこと、その内容や話」であり、語源を遡れば、「もの」と「かたり=かたる の名詞形」が連結されたものある。

●『古事記』の中には「ことのかたりごと」という「ことわり(断り、理)についての表現があることから、「ものがたり」と「ことのかたりごと(ことわり)」は別々の対象を現す言葉であったと推定される。

●「ことわり」とは、「言割る」または「事割る」を意味する「ことわる」の名詞形であり、物事の是非・優劣・仕組みなどを言い分けることを意味する。

●「こと(事)の方は出来事や事件などある特定の事柄を対象とする言葉、一方、「もの(物)の方は漠然とした対象を示す言葉、としてそれぞれ用いられている。

以上のような視点で見ると、「ものがたり」は特定の事柄を対象とした話ではなく、もっと漠然とした事柄を表現した話を意味していたもの、ということになります。

このように「ものがたり」という言葉の意味を考えようとすると、まずは「ことわり」との違い、さらにいえば「もの」と「こと」の違いが問われることになります。


大和言葉における「もの」と「こと」の違い。この件については、従来から哲学界や言語学界でもさまざまな議論が展開されてきました。


次回から考えていきましょう。

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