2019年3月10日日曜日

私仕様・・・供給体制に転換を迫る!

生活民の差延化行動の5つめは「私(わたくし)仕様」です。

現代の消費市場において、供給者が提供する商品やサービスの〝最大共通素〟的な「共効」だけでは満足できなくなった生活民は、オーダーやセミオーダーなどで「私仕様(カスタマイズ)を発注し、自分自身の「私効」を実現しようとしています。

現に私たち生活民の多くは、さまざまな生活分野において、究極的には自分の身体や気分にぴったりのモノやサービスを求めていますが、既存の消費市場では必ずしもそれらが得られるとは限りません。そこで、彼らは、できるだけそれらに近いものを得るため、例え費用はかかったとしても、特注として購入しています。

こうした行動は、眼鏡や紳士服・婦人服などを中心に水着、下着、紳士靴・婦人靴、スポーツシューズから家具、パソコン、カスタムカー、食品、化粧品にまで広がっています。

これまで生活財の分野において「個効」や「共効」を「私効」に変えるのが「差延化」だと述べてきましたので、その論理でいえば、「私仕様」とは「個効」や「共効」をそのままにしたまま、一気に「私効」をつかみ取る行為ということになるでしょう。

あるいは、「私仕様」とは「個効」や「共効」を通過せず、「私効」そのものを直接的に供給者から購入しようとする行為、さらには、「個効」や「共効」をスルーして、直接「私効」へ到達する行為ともいえます。



以上のような「私仕様」に生活民がいかに対応していけばいいのか。このことについては、すでに【
私仕様」・・・生活民はいかに付き合うか?:2017年1月9日】で述べていますが、近頃ではインターネットやAIなどの進展によって、もう一歩進んだ対応が求められるようになってきました。

第1はインターネットやAIを活用した「私仕様」の拡大

インターネット通販の拡大は、売買の簡便性や利便性を上げるだけでなく、ユーザー一人ひとりの要求に個別に対応できる、新たなオーダー方式の可能性を増しています。

例えば携帯端末とAI応用体型計測技術の組み合わせによって、より高度な「オーダーファッション」や、個別ユーザーの要望にきめ細かく対応できる「オンデマンドオーダー」などが可能となり、衣食住から始まって、移動や情報に至る諸分野へ急速に広がり始めています。これからの生活民には、こうしたオーダー様式を巧みに使いこなす能力が求められます。

第2はインターネットを経由した供給者の多様化


SNSや個人サイトなどインターネットによる供給網の多様化で、「私仕様」を求める生活民は自分の感性や目的に見合った供給者を幅広く見つけることが可能になります。そこで、従来の大手や中堅企業だけでなく、AIを使いこなす小企業や個人営業者などにも発注し、純個性的な「私仕様」を共創的に仕上げていく能力が問われることになります。

第3はインターネットやのAIからの離脱


インターネットやAIが急速に拡大するにつれて、それだけでは飽き足らない人々も次第に増加し、ネット以外のナマ情報や口コミ情報への需要も拡大していきます。

とりわけ、生活民の「私仕様」願望には、もともと反・市場的、あるいは反・量産的な感性が下敷きになっていますから、ネットやAIに頼らないで、友人や知人などの口コミだけによるオーダー方式や委託方式への期待もまた高まってきます。

これに対応するには、生活民と供給者の両側において、"顔の見える"オーダーシステムや委託システムを準備する必要が高まってくるでしょう。

以上のように、「私仕様」行動の拡大は、市場社会や情報化社会の需要―供給構造そのものを差延化していく、絶好の機会となるでしょう。

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