第1の視点、つまり「日常界で使われている日常言語(交信言語)は、表層言語(観念言語)と深層言語(象徴言語)に挟まれた言葉である」という立場から見ると、フェイクニュースや脱・真実の拡大という社会情勢に向けて、供給側が対応していくには、次のような姿勢が求められるでしょう。
①深層言語(象徴言語)には介入しない。
この言語は生活民一人ひとりの遺伝的・生活歴的な次元から生まれてくるもので、それぞれの「言語感覚」を形成しています。
日常言語以前のイメージ(元型)やオノマトペ(擬声語)など、意味するものと意味されるものが一体化しているうえ、真実と虚構が仕分けられる以前の混沌たる状況もまた示しており、生活民の言語能力や判断能力を培う源泉となっています。
それゆえ、供給側としては、CMやキャッチフレーズなどで、この次元へ強引に介入していくことは極力避けるべきでしょう。
②表層言語(観念言語)には慎重な提供を。
この言葉は記事や解説、報告や論文、文学や評論などで、観念や概念といった抽象化された記号として使用されています。
一般的には、真実を表すことを目的としていますが、遊戯や文学などでは虚構を表現することも重要な役割です。
このため、供給側がネーミング、ブランド、ストーリーなどで、この種の言葉に関わる場合には、予め真実か虚構かを明示するか、容易に判断できるものとして、慎重に提供していくことが求められます。
③日常言語(交信言語)には是々非々で対応。
この言語は私たち生活民が会話や交流、文通やメールなど日常的に使っているものです。
深層言語と表層言語に挟まれた言語空間の中で使用されていますから、当然のように嘘と真実が混合しています。
供給側が直接介入することはありませんが、使用される言葉に大きく影響を与える立場にありますから、①②の両方の視点に立って、生活民が真偽両方を巧みに享受できるように、有力な応援者として対応していくことが求められるでしょう。
SNSやAIが急伸する時代であればこそ、供給側の言語行動にはいっそうの慎重さが求められるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿