2016年6月15日水曜日

三太郎の優位はこのまま続くのか?②:一寸法師が大きくなった!

大人気の三太郎CMですが、すでに幾つかの疑問点が現れ始めています。

2番めの疑問点は一寸法師が突然大きくなって、視聴者の目にも見えるようになったことです。

同シリーズでは、2015年7月の「かぐや姫の帰省」篇以降、30編近い作品に、極小のキャラクター「一寸法師」が、通常の視聴ではまずは見つからない場所や形で、ひっそりと挿入されてきました。

ところが、2016年6月に始まった「夏のトビラ・一寸法師、登場」では、この一寸法師が突然、大人の体格に変身したのです。

浦島太郎が花咲爺の白い灰を撒き上げると、その中から成長した一寸法師が、いわば「法師」として登場しました。
 
 
これまでの三太郎CMでは、よくよく注意して見ないとまずは見つからないような形で、小さな姿が意外な場所に潜んでいたのです。

このため、見ているのに気づかない、だが何か気にかかる、といった気分を視聴者に与えました。

さらには、気がつけば、アッと嬉しくなる、まだ気づいていない人に教えてやりたい、といった気持ちもまた高めていました。

これこそ、無意識を効果的に刺激する差元化戦略の典型であり、三太郎CMの優位性の一つでした。

けれども、これが見えてしまった。無意識が意識化されてしまった。

今では三太郎を誘って「一緒に山へ行こう」などという展開で、神秘性も象徴性も消え去った、他のキャラクターと全く変わらない姿で動き回っています。

要するに、無意識支援という差元化戦略の、有力な一つを放棄し、代わって六尺法師と三太郎たちとの交遊という、新たな物語創りの方に力点を移しているのです。

これは、差元化から差異化への戦略転換ともいえるでしょう。

こうなると、三太郎CMは有力な魅力の一つを失ったことになります。
もしこれを覆そうとするなら、これからの三太郎CMの中にも、影でしか見えないもの変幻自在のキャラクターなど、新たな無意識刺激手法を導入することが求められるでしょう。
 
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2016年6月9日木曜日

AI(人工知能)がファッション業界を変える?

繊研新聞・繊研教室(2016年6月7日)に寄稿しました!

AI(人工知能)が囲碁・将棋対局、小説創作、自動運転などで予想以上の成果を上げ、その影響がファッション産業にも及び始めている。
AIは今、1950年代の第1次、80年代の第2次に続いて、第3次の発展期にあり、私見によれば、第2次のエキスパートシステムを継承・発展させ認知推論系と、ディープラーニング(深層学習)を中核とする機械自習系の、2つの系列が主導している。・・・以下は http://gsk.o.oo7.jp/insist16.html#AI

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2016年6月3日金曜日

三太郎の優位はこのまま続くか?①:みんなが英雄でいいの?

ミソロジー戦略で白戸家に勝った三太郎ですが、その優位はこのまま続くのでしょうか?

差元化戦略という視点からみると、最近の三太郎CMには、すでに幾つかの疑問が現れています。

最初の疑問点:「みんながみんな英雄」でいいのでしょうか?


同CMシリーズ では2016年1月から「春のトビラ·みんながみんな英雄」篇を公開していました。


タイトルだけから判断すると、登場人物のそれぞれが英雄であり、ユーザーの一人一人もまた英雄だ、という意向が伝わってきます。

だが、スマホのユーザーの1人1人が英雄であっていいのでしょうか?

電車内でメール操作に熱中しすぎて弱者に優先席を譲らなかったり、SNS の使い過ぎイジメやシカトが小・中学生からママ友の間にまで広がるなど、スマホという情報機器は個々人の自意識を過剰に拡大させています。

こうした悪弊が広がる以上、ユーザーをさらにヒーローやヒロインに祭り上げて、無粋な英雄に仕上げるのはいかがなものでしょう。

現に同CMの歌詞では

「特別じゃない 英雄じゃない  みんなの上には空がある」
真逆の言葉から始まっています。

反語だ、というつもりかもしれませんが、この矛盾に気づかない鈍感さに、感覚・感性のうえでかなりの危惧を覚えます。

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