2016年5月21日土曜日

白戸家はなぜ三太郎に敗れたのか?③:違和感が排除した!

第3は感覚・感情の視点。私たちは無意識下の感覚次元でも、時代の流れや社会の変化に敏感に反応し、さまざまな感情を生み出しています。

この視点から見ると、白戸家と三太郎のCMの間には、次のような違いがあり、これが違和感となって、両者に差をつけています。

1つはモデルとなる家族像の差

白戸家は伝統的な名門家族をモデルとし、三太郎は何人かのキャラクターの共棲するシェア家族をモデルにしています。

情報機器のユーザーの場合、伝統的な家族を象徴するのは固定電話、純個人向け情報手段の代表はスマホ、ということになりますから、直感的にも三太郎CMがぴったりします。




 2つめは顧客となる家族構造の変化

現在の日本では、人口構造の変化に伴って、三世代家族や核家族などの伝統的な家族は漸減し、代わって単身者やDINKS (子どものいない共働き夫婦)などが漸増しており、シェアハウスやコレクティブハウスのような新型家族も始まっています。

この点でも、伝統的家族をモデルとする白戸家CM よりも、個人ユーザーをモデルにした三太郎CMの方が、より多くの顧客をとらえることができます。

3つめは旧記号を利用する難しさ

白戸家CMでは2015年10月から、往年の名作アニメの主人公が登場する「MOON RIBAR」シリーズを流しました。有名タレントが「セーラームーン」「アトム」「ちびまる子」「矢吹丈」といった人気キャラクターに扮し、それぞれの現在を実写化したもので、三太郎CMの昔噺キャラクターに対抗しようとする意図も感じられました。

過去のストーリー(物語)を現在のストーリーに重ねるというダブル記号化戦略ですが、重ね方に少しでも違和感があると、視聴者に強い拒否感を与えることになります

伝統的・汎用的な昔噺キャラクターと異なって、人為的に作られた物語キャラクターでは、視聴者がさまざまな感情を移入しているケースが多く、ダブル化されたストーリーの中でそれらがうまく活かされていない、かなりの不満や不快感を覚えることになります。

白戸家CMのアニメ復活シリーズでは、この危惧がまさに的中し、多くの視聴者から批判されました。感覚的な不快感がCM戦略を排除したのです。

以上のように、感覚・感情の点において発生した違和感もまた、白戸家が三太郎に敗れた理由の一つといえるでしょう。


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