2015年9月11日金曜日

物語と神話・・・どこが違うのか?

視覚手段でデザインとアートが対比されたように、聴覚手段では物語(Story)神話(Mythology)が対比されてきます。

物語とは、一人の人間が言語を駆使して結びつけた意味の流れ(パロール1)を、他人に向かって語りかけた(パロール2)うえ、集団的な虚構物として認めさせる(ラング)文章群で、読物、小説、散文、講談、台本などの形をとることもあります。

一方、神話とは、民族や種族などの人間集団の心の底に潜んでいる、集団無意識的な世界像を、さまざまな象徴(C.G.ユングのいう元型:archetype)に仮託させて紡ぎ出した文章群で、昔噺、民話、お伽話、伝説などの形をとることもあります。

要約すれば、

物語とは、あくまでも言語界という、意識的、目的的、共通コードを前提にしたコミュニケーション活動であり、
神話とは感覚界において、無意識的、未目標的、共通体感的に行うコミュニケーション活動ということになるでしょう。

マーケティングに応用すると、物語は差異化戦略で、また神話は差元化戦略で、それぞれ活用できます。

物語は、差異化戦略の一つ、いわゆるストーリー戦略になります。「曰く因縁由緒来歴」などの意味を一連の記号の流れに変えて、商品やサービスの上に乗せることにより、広告効果や販売拡大をねらうことができます。

神話は、差元化戦略の有力な手法の一つ、ミソロジー戦略になります。商品やサービスの上にさまざまな元型を組み入れた象徴の流れ加えることにより、生活者や消費者の感覚や無意識に訴求して、広告効果や販売拡大をねらうことができます。

実例をあげれば、次のような事例があげられます。




Softbankの「白戸家」CM・・・「お父さん犬」を中心にした家族の動静を描く、典型的なストーリー戦略です。西部劇、宇宙編、悪代官など、劇的なシナリオ(scenario)によって、構築的に作られたイメージを視聴者に訴求しています。




auの「あたらしい英雄」CM・・・、日本の昔話を代表する3太郎(桃太郎、金太郎、浦島太郎)が友達となって、さまざまなシーンを動き回るCMです。日本人にとって、3太郎は童子や道化など、いわゆる「元型」であり、私たちの心の奥に浸透して、郷愁や安堵感など与えますから、このCMはミソロジー戦略の一例ともいえます。
もっとも、現在までのところ、このCMのシナリオは日常的・意識的な次元に留まっていますから、ミソロジーを借用したストーリー戦略ともいえるでしょう。


Disneyのキャラクター戦略・・・Disneyの動画はもとよりDisney land、Disney sea、Disney Resortなどにおける、さまざまなキャラクター(Mickey Mouse、Donald Duck、Pluto、Peter Pan、Cinderella、Snow Whiteなど)は、基本的に童子、童女、道化などの「元型(archetype)」であり、これらによって夢想、幻想、郷愁、追憶、安心、永遠など無意識界へ遊ぶことができます。
その意味で、典型的なミソロジー戦略といえるでしょう。
マーケティング学者の中には、このキャラクター戦略を差異化の典型だと述べている方もいますが、本質を外した、皮相的な見方だと思います。

以上のように、マーケティング戦略の視点を差異化から差元化へ拡大すると、さらに新しい方法論が広がっていきます。

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