A.マズローの欲求段階説には、さまざまな問題点のあることを指摘してきました。とりわけ、「欲求(needs)」の最終的な段階として「自己実現」を掲げるのは、あまりにも一元的な論理展開であり、かなり無理があると述べてきました。
それにも関わらず、大変驚くことが起こりました。「マーケティングの神様」といわれる、かの有名なP.コトラー先生が、マーケティングの次の目標として「自己実現(Self-actualization)」を掲げられたのです。
それにも関わらず、大変驚くことが起こりました。「マーケティングの神様」といわれる、かの有名なP.コトラー先生が、マーケティングの次の目標として「自己実現(Self-actualization)」を掲げられたのです。
昨年9月に東京で開催された「WORLD MARKETING SUMMIT JAPAN 2014」において、コトラー先生は、マーケティングの次の段階、つまり「マーケティング4.0」では、「自己実現」がキーワードになる、と主張されました。
コトラー先生はこれまで、マーケティングの進化過程を、次のような3段階で説明してこられましたが、今回は4番目の段階として「自己実現」が目標になると述べられたのです。
コトラー先生はこれまで、マーケティングの進化過程を、次のような3段階で説明してこられましたが、今回は4番目の段階として「自己実現」が目標になると述べられたのです。
果たして、この「自己実現」がA.マズロー先生のいわれる「自己実現」と同じ概念なのかどうか、詳細はわかりません。
しかし、進歩史観や発展段階説が前提になっているのをみると、おそらく似たりよったりの概念といえるのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、コトラー先生もまた、マズロー先生の誤謬を追いかけることになりそうです。「自己実現」という、かなりエゴイスティックな目標を重視すれば、バランスある生活願望を軽視することになっていきます。
もっとも、このことに気づかれたのか、最晩年のマズロー先生は、「自己実現」のさらに次の段階として「自己超越(Self-transcendence) 」を提起されています。つまり、自己実現が満たされた後は、自己などという小さな枠組みを超えて、ついには「無我」の境地に至るということでしょう。ここまでくると、仏教の「解脱」や東洋哲学の「虚無」に向かうことになりそうです。
さあ、コトラー先生はどうされるのでしょうか? 「自己実現」の次が「自己超越」となれば、「マーケティング5.0」は、例えば「解脱」や「虚無」が目標になるのかもしれません。そうなった暁には、マーケティングなどという方法論もまた、虚空の果てに飛び散っていくことになるでしょう。
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