これまで述べてきた生活界の構造を、「生活球のしくみ」として、イラストで表現してみましょう。
①私たち人間は、広大な天地、悠久の大地という自然環境の中に放り出されています。この環境世界を、私たちは人間に備わった生理的な〈感覚〉と人為的な〈シンボル化能力〉の両方によって把握したうえで、積極的あるいは消極的に働きかけています。
②人間はまず、人間という〈種〉に備わっている〈感覚〉によって、周りの環境を「身分け」し、把握できる範囲での〈物界〉を〈モノ界〉として理解しています。続いて〈シンボル化能力〉、つまり〈言語能力〉によって、〈モノ界〉を「言分け」し、言語化できる世界を〈コト界〉として理解しています。このため、生活構造の上下は、〈感覚〉と〈言語〉を両極とする軸となります。
③言語が作りだす生活世界は、水平方向に広がる時、言葉によって他人や社会と交流する〈社会界〉と、言葉によって自分自身と語り合う〈個人界〉を両極として、両者の間で展開されています。
④言語が作りだす生活世界は、言葉自体の持つ機能の両面性によって前後に広がり、〈真実〉を表現する世界と、〈虚構〉を表す世界を両極として、両者の間で展開されています。
⑤私たちの通常の生活は、〈感覚〉と〈言語〉の間、〈社会〉と〈個人〉の間、〈真実〉と〈虚構〉の間にある〈認知〉〈間人〉〈日常〉のクロスする世界、つまり「日常界」あるいは「平常界」として営まれています。
逆にいえば、私たちの生活世界は、日常・平常界を中心にして、感覚界・言語界・社会界・個人界・真実界・虚構界の、6つの世界で構成されているといえるでしょう。
歌舞伎の代表的な演技である「六方」は、天・地・前・後・左・右の6つをさしていますが、それと同様に、私たちの生活世界にも日常・平常を中心として、その周りに6つの方向が潜んでいるのです。
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