2022年12月30日金曜日

食料自給率を振り返る!

人減先進国としての日本の将来。・・・それを考える前提として、過去120年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。

前回のエネルギー供給に続き、今回は食料自給率の変化を振り返ってみます。

食料自給率とは何でしょうか。農林水産省の定義によると、「我が国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標」として、次の3つを挙げています。

品目別自給率=国内生産量/国内消費仕向量

カロリーベース総合食料自給率=11日当たり国産供給熱量/11日当たり供給熱量

生産額ベース総合食料自給率=食料の国内生産額/食料の国内消費仕向額

このうち、農林水産省の自給率統計では、昭和40年(1965年)以降の動向だけが推計されており、それ以前の動きは不明です。

これでは、当ブログの意図する20世紀全体の動向はつかめませんので、食料の中核である穀類の品目別自給率の推移を独自に推計したうえで、カロリーベース、生産額ベースの動きと比較してみました。

その結果が下図のようになりました。3つの食料自給率(穀類の品目別自給率、カロリーベース総合食料自給率、生産額ベース総合食料自給率)を比べたうえで、人口推移と比較しています。


これを見ると、次のようなトレンドが読み取れます。

穀類量ベースの自給率は、次のように変化しています。

19001944年の45年間は、1913年の95から始まり、30年の80%を経て、39年に87にまで落ちている。

194564年の20年間は、1946年の85から始まり、52年には94%、58年には59%と、乱高下を繰り返しつつ、64年には63まで落ちている。

1965~79年の15年間は、1965年の62から始まり、67年の64%までは上がったものの、以後は低下し、79年には35まで落ちている。

1980~2020年の41年間は、80年の29%に始まり、93年の22%で下限を、94年の33%で上限をそれぞれ示した後、30%前後を保っている。

カロリーベースと生産額ベースの自給率は、次のように動いています。

❶カロリーベースでは、1965年の73%からほぼ低下しつづけ、1993年の記録的な冷夏による37%への急落の後、翌年には40%を回復し、2011年からは46~48%を保っている。

❷生産額ベースでは、1965~80年に90%から80%へ落ち、90年代に70%2000年代に60%に落ちたものの、2010年以降はやや回復し、70%を維持している。

以上のような動向を比べてみると、次のようなトレンドが読み取れます。

現状201020年)では生産額ベースが70%台カロリーベースが4648穀類量が2729と、3つの自給率がかなり分離しており、生産額ではまずまずだが、カロリーや穀類では50を切っている。この背景として、2009年以降の人口減少の影響が考えられるが、依然として不安が続いている。

1965年以降のカロリーベースと穀類量ベースはほぼ比例した動きを見せており、1980年以降のカロリーベース/穀類量ベースはほぼ1.51.7倍、平均1.6である。但し、196070年は1.2ほどである。

③この比率1.2倍を前提にして、1965年以前のカロリーベースを推測(上限100)してみると、195093%、1930100%、1913100%となる。とすれば、同時期のカロリーベースもまた100であったと推測できる。

これらの動向を人口推移と比べてみると、次のような傾向が浮上してきます。

❶戦前の人口容量7500万人の食料は、ほぼ全てが自給できていた。

❷戦後の人口容量12800万人では、194580年の人口急増に伴って、穀類は90%台から30%台へ、カロリーもまた65年の73%から80年の53へ急落している。人口が戦前の人口容量7500万人を超える分の食料を、急激な進展した加工貿易によって補ってきた結果である、ともいえよう。

1980年以降は人口が飽和から減少に向かうにつれて、穀類量、カロリー、生産額とも、低下から微かな上昇に転じている。とりわけ2010年以降は、3指標とも回復基調にあり、人口容量のゆとり示し始めている。

❹とはいえ、穀類量29%、カロリー46%、生産額71%という自給状況は、依然として人口容量の不安定さを示している。もっとも、今後の人口が減少して7500万人を切る場合には、カロリーベースで80%ほどの自給が可能となろう。

要約すると、わが国の食料自給率は、戦前の100%時代から、前後の人口急増期に急落したものの、1980年代以降は人口の停滞・減少につれて幾分回復してきました。しかし、今後の人減時代を保障するには、まだまだ至っていない、と言うべきでしょう。

2022年12月10日土曜日

エネルギー供給の推移を振り返る

人減先進国としての日本の将来。それを考える前提として、過去120年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。

前回のエンゲル係数に続き、今回はエネルギー供給の構成変化を振り返ってみましょう。

下図は人口の推移、エネルギー自給率1960年以降、低位発熱量ベース)、一次エネルギー供給構成の変化を比較したものです。

エネルギー自給率とは〔国内産出量/一次エネルギー供給量×100〕で算出した%です。

一次エネルギーとは、自然界から得られたまま、変換加工をする前のエネルギー源であり、供給状況の原像を示しています。










3つのトレンドを比較してみると、次のような傾向が読み取れます。 

●120年間の変動過程を振り返ると、190045194580198020203区間が浮上してくる。

190045・・・太平洋戦争以前は、石炭・木材・水力が主力であり、自給率は90%以上を保たれていたと推定される。この構成によって、戦前の人口容量(7500万人)は支えられていた。

194580・・・戦後の35年間は自給構造の一大転換期であり、50年代以降の石油急増石炭・水力・木材の急減によって、自給率は60年の58.1から73年の9.2へと13年間で急落している。しかし、この転換によって、人口容量が12800万人にまで拡大されたため、人口は急増している。

19802020・・・経済の高度成長が終るにつれて、石油依存からの脱却が始まり、石炭は微増、天然ガスと原子力の漸増を示していたが、11年の東日本大震災によって原子力の急減と水力の回復が見られ、その後は再生可能分の微増など多様化が進んでいる。こうした変化に影響され、自給率は2010年の20.3から14年の6.4まで落ちたが、その後やや回復し、2019年に12に至っている。かくして人口容量の上限に近づいた人口もまた、次第に停滞し始め、2008を境に減少に転じている。

●現在の自給率は10%前後であり、残りの90%の大半を占める化石系資源を、海外に依存している。2019年時点における海外依存度は、石油が99.7石炭が99.5天然ガスが97.9と、ほとんどすべてを輸入に頼っている(資源エネルギー庁「2020—日本が抱えているエネルギー問題」)。 

以上のように見てくると、自給率の高かった戦前の45年間、人口の急増を支えた戦後の35年間、人口の停滞・減少を招いた40年間の、エネルギー供給構造と人口動態の変化がおぼろげながらも浮上してきます。

とすれば、今後の人口減少社会を進めていくためには、❶人口減少に見合ったエネルギー必要量の縮小、❷風力・海水力・太陽発電など自然系エネルギーの拡大による、輸入の抑制、❸輸入必要量を賄うための輸出構造の再構築、といった対応が求められるでしょう。