人減先進国としての日本の将来。それを考える前提として、過去100年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。
前回の人口分布に続いて、今回は平均寿命の変化を振り返ってみましょう。
いうまでもなく平均寿命とは、0歳時の平均余命(ある年齢の人がその後何年生きられるかという期待値)です。
国家の医療・衛生水準や人生の平均的長さを表していますので、一人の人間の生涯にどれほどの生活資源が必要なのか、いわば「生涯容量」を表すことにもなります
そこで、厚生労働省の簡易生命表によって、約100年前からの平均寿命の推移を顧みると、下図のようになります。
①1900年ころ男性は43.97歳、女性は44.85歳で、40年代までは40歳代を2~3歳ほど上昇していたが、太平洋戦争後に急上昇に転じ、47年には男性50.06歳、女性53.96歳と50歳を越えた。 ➁戦後の1955年になると、男性63.60歳、女性67.75歳と上昇し、60年に70歳を女性が、75年に男性がそれぞれ超えるとさらに伸びて、2020年には男性81.64歳、女性87.74歳に達している。 ③男性・女性の平均寿命を単純平均化すると、1901年の44.41歳から、47年に52.01歳、51年に61.27歳、65年に70.33歳と上昇し、2000年に81.16歳、2020年に84.69歳に達している。 ④120年間で、平均寿命は1.9倍、ほぼ2倍に伸びている。 |
以上のような平均寿命の推移を前提に、1901年の44.41歳を基準値1.00として、各年の上昇比率を算出し、その比率に各年の総人口を掛け合わせると、「総生涯容量」の傾向が推定できます。
❶生涯容量とは、一人の人間が一生の間に必要とする生活資源などの容量である。例えば、1901年の一人は44歳分の生活資源などを必要としていたが、2020年の一人は85歳分が必要となり、前者より1.91倍も多くなる。 ❷総生涯容量とは、各人の生涯容量に人口の総数を掛け合わせたもので、全人口が必要としている総容量を表している。 |
総生涯容量の変化を想定すると、下図のようになります。
①1901年に4436万人分であった総生涯容量は、戦前の35年に7528万人分に達し、戦後の47年に9147万人分と急拡大した後、55年に13321万人分となって、工業現波の人口容量12800万人を超えている。 ②その後、1980年に20047万人と2億人を超え、2020年には24056万人に達している。つまり、人生の長さを考慮した「総生涯容量」となると、人数だけの許容量を示す「人口容量」を大きく超えることを示している。 |
こうしてみると、長寿者の多くなる社会では、単純な人口容量の規模を超えて、その倍ほどの生存容量が必要となるようです。
経済規模や社会保障制度はもとより、生活環境、国土構造、コミュニティ維持などにおいても、統合的な生活構造維持体制が求められる、ということでしょう。
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