文字や記号は、音声言語や識知的な観念を、視覚的に表現しようとする、人類の発明ですが、それがゆえに深層・象徴言語とも密接な関りを持っています。
前回整理した文字分類を、文字と記号で分けてみると、次のようになります。
①文字で表現するもの・・・音節文字と音素文字(ともに表音文字)、表語文字(表意文字)。 ②記号で表現するもの・・・象形文字(表意文字)、記号文字と象徴文字(ともに絵文字)。 |
❶文字で表現・・・(意味/音声)/文字・・・文字によって音声の意味するものを表現する。 ❷記号で表現・・・意味 または(意味/音声)/記号・・・記号によって意味や音声の意味するものを表現する。 |
このように整理すると、文字よりも記号の方が、深層・象徴言語には馴染んでくるように思われます。
深層・象徴言語という言語段階は、「識分け」で捉えたモノコト界の事物を、「言分け」次元の言葉や記号などに置き換えようとする、初期的な次元ですから、曖昧な音声や深層的なイメージほど馴染みが深いからです。
それゆえ、識分け力が捉えた物音や幻像などは、文字よりもイメージの方が表現されやすい、といえるでしょう。
例えば、ユング心理学でいう元型(アーキタイプ)は、人類の深層心理に潜んでいる普遍的なイメージのことですが、まずはさまざまなイメージとして象徴文字で表現され、そのうえで音声言語によって捉えられています(ユングの元型は言葉で把握されている!)。
その延長線上で、さまざまな宗教のシンボルもまた、太陽、星、光、大樹、大河などを象徴するシンボルマークとして、象徴文字で表現されています。
とすれば、深層・象徴言語の段階では、象徴文字がまずは生まれ、続いて象形文字と記号文字に進化していくのではないでしょうか。
象徴文字(元型、宗教印、国旗等)、象形文字(ヒエログリフ、古代エジプト文字等)、記号文字(ピストグラム等)の順に、文字が生まれたということです。
一方、音節文字、音素文字、表語文字は、「音声で言分ける」という「言分け」次元から生まれてきます。
このうち、表語文字(漢字、アラビア数字等)は、前回述べたように、象形文字が起源となっているケースが多く、「識分け」次元と「言分け」次元を繋ぐ役割を果たしていますので、深層・象徴言語と日常・交信言語の両界に跨る文字と言えるでしょう。
また音節文字(ア、イ、ウ、エ、オ等)と音素文字(A、B、C、D、E等)は、すでに音声化された言葉を文字化するという表音文字ですから、「言分け」で生まれた日常・交信言語の次元に近いと言えます。
以上のように、文字や記号という視覚言語もまた、音声言語と同じように、深層・象徴段階で発生し、やがて日常・交信段階へと変貌していくのです。
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