2019年2月27日水曜日

編集・・・思考や判断で個効を私効化する!

生活民の差延化行動の4つめは「編集」です。

本格的な「自給自足」にはいささか躊躇する生活民も、さまざまな商品が溢れている消費市場の中から、幾つかの既成品を購入したうえで、自らの手は加えないものの、自由自在に「編集」を加え、自分なりの「私効」品を作り上げるという行為についてはしばしば採用しています。

具体的な事例はすでに【
編集・・・問われるのはコトとモノの調整力!:2017年2月4日】で触れていますが、生活民という立場からから見れば、次のようになります。

マイブレンド酒・・・生活民がバーのカウンターにズラッと並べられたウィスキーのモルト(原酒)を選びだし、さまざまに編集しながら、自分だけの「マイウィスキー」を作り出す生活行動。

惣菜バイキング・・生活民がさまざまな惣菜を自由に組み合わせて、好みの献立を作りあげる生活行動。惣菜店の店頭にズラッと並んだ50~60種の惣菜、値段は100グラム150~300円の2種類。生活民は値段別のプラスチック容器に種類も量も自由に取って、カウンターで1回計量するだけ。別売りのごはんと合わせると、体調や好みに見合った弁当ができあがります。

自由編集アクセサリー・・生活民のアイデアで、1つの素材がブローチになったり、ペンダントになったり、いろいろなデザインを楽しめる、フリースタイルのアクセサリー素材。生活民がその時の気分でいろいろと工夫して、より満足度を高めることができます。

高級コンポステレオ・・ちょっとマニアックな生活民が、A社・B社・C社の商品の中から最良の部品を買ってきて、独自に組み合わせ、自分好みの音感を作り出します。

これらの事例を見ると、「編集」行動とは、モノには直接手を加えないものの、コト次元の組み合わせや変換によって、モノ次元の「共効」や「個効」を「私効」に変えてしまう生活行動ということになります。

しかし、こうした行動は情報、映像、音声などコト次元の供給財についても行えますから、その場合にはコト次元の「共効」や「個効」を「私効」に変えてしまう生活行動ということにもなります。



とすれば、「編集」行動とは、生活民が市場から取得したコトとモノに対し、自ら思考や判断を介入させることで、「共効」や「個効」を「私効」に変えてしまう生活行動といえるでしょう。

2019年2月19日火曜日

参加・・・差延化行動の妥協策

生活民の差延化行動の3つめは「参加」。従順な「消費」行動と積極的な「差延化」行動の妥協策といえるものです。

現代の市場社会に生きる生活民の中には、供給者の差し出す「共効」だけでは満足できない者も増えています。

彼らは「手作り」や「変換」までとは行かないものの、自らが商品作りに「参加」することによって「私効」を満たそうとする行動へ向かいます。

目標とする「私効」をめざして、~8割ほどの素材や部品を消費市場から購入し、その「個効」を活かしつつ、残りの2~3割については自らの手を加え、それによって最終的な「私効」品を作り出すという行動です。




具体的な事例は、【
「参加」・・・生活民はこのように付き合え!:2017年1月21日】で触れた通り、組み替えスーツ、自由設計プレハブ住宅、手作りキット家具、自作用ログハウスなどがあげられます。

組み替えスーツ・・2着のスーツでジャケットとパンツを組み替えて4通りの着こなしが可能になる「組み換えスーツ」も、ユーザーの参加性を実現しています。

自由設計プレハブ住宅・・・外観や内部の設計に意見や要望を柔軟に要求できるプレハブ住宅で、参加性を高めることができます。

手作りキット家具・・・予めカットされた木材、ネジやパーツがセットされたキットを購入して、それぞれを組み合わせつつ、ユーザーは自らの意向に沿った家具を仕上げることができます。

自作用ログハウス・・手作りキット家具がさらに大規模化したもので、すべてプレカットした部材をフルキットで購入し、大型の機械や専門的な工具を使わなくても、マニュアルに合わせて組み立てるだけで、ユーザーの自由設計を組み込んだログキットハウスを完成させることができます。

このほか、食品・飲料分野の製造工程参加、衣料分野のデザイン参加型ファッション、キャラクターシールやデコレーション用具によるマイグッズ化、インターネットによるデザイン参加、乗り物分野のキットカー改造バイク、住宅分野のDIY(ドゥー・イット・ユアセルフやガーデニングなども、この分野の先例といえます。

以上のように、「参加」行動は、消費行動と自給自足行動の接点に位置するもので、市場社会に生きる生活民の、最も現実的な生活行動ともいえるでしょう。

2019年2月9日土曜日

変換・・・差延化行動の極致!

生活民の差延化行動の2つめは「変換」。これこそ、差延化」行動の極致といえるものです。

現代社会に生きる生活民は、ほとんどの生活財を市場から購入し、「共効」を「個効」として、それぞれの暮らしを作り上げています。

しかし、生活民の中には既存市場で流通する商品の「共効」をほとんど認めず、市場から既製品を購入はするものの、既存の用途「個効」としては使用せず、それを大きく「変換」して、自らの「私効」を実現する人たちが増えています。

すでに
「変換」・・・生活民マーケティングの神髄!2017年2月13日】で紹介していますが、代表的な事例は次のようなものです。

100均商品(100円ショップの商品・・・コーヒーフィルターをリースやランプシェードに、ザルを壁掛け時計に、ステンドグラスオーナメントを窓枠風インテリアに、焼き網をウォールシェルフに、フォトフレームをガラスケースに、100円手ぬぐいを子ども服に・・・などなど、生活民はすでにさまざまな転換を実現しています。

工業・工作用のマスキングテープ・・さまざまに変換されています。壁紙、写真フレーム、窓飾りなどのインテリア化は勿論、メガネフレーム、ブローチ、折り紙ネックレスなどのアクセサリー化、ギフトラッピング、グリーティングカードなどの交際グッズ化というように、多様な変換事例が生み出されています。

風呂敷・・・さまざまな使用法が生み出されています。粋なデザインが描かれていますから、壁掛けやテーブルクロスにもなりますし、ネッカチーフとしても使えます。

冷蔵庫・・・真夏に独身女性がどのように冷蔵庫を使っているのか、アンケート調査では食品しか上がってきませんが、実際に写真を撮ってみると、食品以外に化粧水、薬品、ビニール袋に入れた通帳や現金、新品のパンティストッキングも入っています。ストッキングは、一度冷凍すると伝染しにくくなるからです。


また冷凍庫には生ごみ入っています。1週間単位で生活していると、毎日は捨てられないので、腐臭を避けるために冷凍してしまうからです。

さらに先端的な事例は、緊急時のために冷蔵庫へ入れておく救急医療情報キット「
命のバトンでしょう。

とすれば、冷蔵庫は必ずしも食べ物を保存するだけのものではない。生活民はむしろ総合保管庫、あるいは総合ごみ箱に変換しているのです。 

以上の事例の中で、冷蔵庫のケースを考えると、本来の「ねうち」は食品や飲料を冷却保存すること(共効)であり、多くの消費者はそれに従ってさまざまな食品を保存しています(個効=ききめ1)。

ところが、独創的な生活民の中には、薬品や化粧水、あるいは銀行通帳や現金など、さらには緊急時用の「命のバトン」を保存するという保管機能(私効=ききめ2)を実現する者もいます。

こうしたユニークな使用法が広がると、「私効」がやがて「個効」に変わり、ついには「共効」となっていきます。



言語行動において、「ヤバイ=危ない」というラングが、一部の若者の間で「ヤバイ=すごい」(パロール1)から「ヤバイ=カッコイイ」(パロール2)へと“差延化”されているうちに、ついには「ヤバイ=感動的」(ラング)となってしまったことと同じなのです。