生活民が差汎化対応を積極的に行えば、既成の消費市場を自助のための「生活素場」に変えていくことができます。
生活民の差延化行動が増加するにつれて、供給側でもこれに対応するような経営行動が高まってくるからです。
例えば「手作り」行動の拡大は、DIY(Do it yourself)産業や100円素材産業などを生み出し、「編集」行動の進行は総菜バイキングやマイブレンド酒などを、すでに出現させています。
さらに才知に富んだ「変換行動」に刺激されて、供給側でも意外な新商品を生み出しています。
①洗顔クロス・・・東レ㈱が1987年から発売しているメガネ拭き用「トレシー」は、洗顔時に使うと「毛穴の汚れを取るのに効果的」という口コミが20~30代の女性の間で広まって、売り上げを4倍に伸ばしました。これに対応しようと、同社では2004年に、洗顔専用の「トレシー洗顔クロス」やボディ専用の「トレシーなめらかボディタオル」を発売しています。
②手芸用マスキングテープ・・・テープ状ハエ取り紙からスタートし、包装用テープや工業用マスキングテープなどの粘着テープを主力製品とするカモ井加工紙㈱は、手芸好きの女性たちの間で広がった、マスキングテープの応用事例に感銘を受けて、2008年に色鉛筆のような20色のテープ「mt」を開発し、文具店や雑貨店で発売しています。
③食べるラー油・・・激辛香辛料のメーカーである㈱桃屋は、リーマンショック後の内食志向が強まる中で、単身者や共働き世帯などでは「のっけ飯」や「卵かけごはん」など、簡単ご飯への需要が浮上し、激辛のラー油を利用する動きを捉えて、2009年、激辛香辛料の1つを「食べる調味料」や「食べる料理」へと用途を転換させ、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」を発売しました。
以上のように生活民の差汎化対応が拡大すれば、企業側の差延化対応も広がりますから、消費市場は生活素場に変わっていきます。
それこそが、生活民マーケティングとって、究極の目的の一つなのです。
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