これまで〝差延化〟行動の代表的な事例を幾つか眺めてきましたが、改めて整理してみると、生活民が消費市場へ対応していく時に留意すべき、基本的な要件が幾つか見えてきます。
①「自給自足」実現のため「他給自足」を活用する。
生活民の生活の基本である「自給自足」を実現していくには、自然界はもとより市場界まで、外部社会に存在する、あらゆる生活素材(効素:効用の素)を柔軟に利用する「他給自足」能力が求められます。
②コト次元で差延化力を高める。
独創的な思考家が標準語の単語の意味を私的な意味に変えて豊かに使いこなす(パロール2)ように、自然界の「効素」や市場界の「共効」などを素材にして、自らの「私効」を作り上げていく、多面的な応用力を高めなければなりません。
③モノ次元で差延化力を高める。
モノ次元での差延化力(パロール2)を実際に具現していくためには、モノそのものの選択力はもとより、直接それらに手を加えて「効素」や「共効」を「私効」に変換していく、モノへの差延化力が求められます。
④コスト次元で差延化力を高める。
自給自足であれば、生活民は己の力だけでモノやサービスを獲得できますが、市場社会の中では「効素」や「共効」を購入したうえで、「私効」化しなければなりませんから、市場価格そのものもまた差延化し、独自のコスト体系を創り上げていく態度が必要になります。
⑤モノ・コト・コストの差延化で消費市場をデコンストラクト(déconstruct:解体・再構築)する。
コト、モノ、コスト次元での差延化を実現することで、生活民は市場から押し付けられる商品やサービスのネウチを換骨奪胎し、その積み上げによって販売装置である「消費市場」の意味や機能さえも、生活素材提供装置としての「生活素場」へと再構築していかなければなりません。
以上のように、生活民の差延化行動には、既成の社会的装置として確立されている消費市場の機能変換が期待されていますが、さらにはその前提である市場社会そのものに対しても、修正の可能性を保持していると考えるべきでしょう。
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