「差延化」という言葉は、【21年前、差延化戦略を提案しました!】(2015年7月31日)で述べたように、ポスト構造主義の主導者、J.デリダの哲学用語「差延」をマーケティング戦略に応用した、筆者の造語ですが、関係学会や業界などでは、ほぼ定着しているようです。
しかし、この時には供給者サイドからのマーケティング戦略の一つとして提案したものであって、生活民というユーザー側への提案ではなかった、と反省しています。
そこで、生活民のサイドに立って、「個効」を「私効」に変換する場合の「差延化」について、改めて触れておきましょう。
すでに【生活民は「価値」よりも「私効」を重視!】(2016年11月22日)で述べた通り、言語学の知見に基づくと、生活民にとっての「価値」=ネウチには3つの形があります。
- 価値=共効(Social Utility)・・・社会界において、ラング=社会集団が共同主観として認めた「共同的有用性」。
- 個効(Individual Utility)・・・間人界において、生活民がパロール1=個人使用を行う時に、一人の個人として、社会的効用を受け入れた「個人的有用性」。
- 私効(Private Utility)・・・私人界において、生活民がパロール2=私的使用を行う時、一人の私人が独自に創り出した「私的有用性」。
私たちが日本語という言葉を使う時、通常は日本社会で通用している単語と文法に従って会話や文通をしています。しかし、実際の生活では、辞書や文法書から外れた用法で、言葉を使うケースもかなりあります。それらに準拠しながらも、自らの創意を加えて、新たな用法を編み出すこともあります。
例えば「ライオン」は猛獣の獅子を表す言葉(ラング)ですが、最近の若者言葉では「朝から晩までメールを送ってくる人」(パロール1)を指すそうです。誰かが(株)ライオンのコピー「おはようからおやすみまで暮らしを見つめる」をもじって使い始めたこと(パロール2)が、一般化したものです。
モノに置き換えれば、電気冷蔵庫のネウチは食品や飲料を冷却保存すること(共効)であり、多くの消費者はそれを購入して、さまざまな食品を保存しています(個効)。ところが、独創的な生活民の中には、薬品や化粧水、あるいは銀行通帳や現金などを保存すること(私効)もあります。それが広がって、緊急時のための「命のバトン」のように、「私効」が「個効」となって、ついには「共効」となる事例も現れています。
この差延化には、私仕様、参加、手作り、編集、変換などの方法がありますが、生活民はどのように使いこなしていけばよいのでしょうか。
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