2016年11月29日火曜日

新たな「価値」を創るには・・・

「価値創造こそマーケティングの王道」という言説が、あちこちで喧伝されています。

ここでいうマーケティングとは、あくまでも供給者の立場からの「サプライヤ―・サイド・マーケティングSupplier- side Marketing)」ですから、それなりに意味のあることでしょう。

しかし、このブログで再三述べてきたように、マーケット(市場)へのアプローチは、供給者からだけ行われるものではなく、需要者あるいは生活民のサイドからも行われています(User-side Marketing)。市場社会に生きる生活民は、好き嫌いにかかわらず、消費市場と付き合っていかなければならないからです。

とすれば、マーケティングという概念もまた、供給側だけでなく、供給側+需要側の両面を含めることによって、初めてより統合的・全体的な視野を獲得できることになります。

従来、ほとんど無視されてきた生活民側からのアプローチを理解することで、供給サイドからのマーケティングも、いっそうレベルを上げていくことが可能になるのです。

以上の視点に立つと、「価値」の創造もまた、供給者側からの一方的なネウチ作りにすぎません

市場社会における「価値」とは、先に述べたように「社会界において、ラング=社会集団が共同主観として認めた共同的有用性」であり、「共効(Social Utility)」という、一つのネウチにすぎません。

一方、真の生活民が求めているのは、「私人界において、パロール2=私的使用を行う時、一人の私人が独自に創り出した私的有用性」、つまり「私効(Private Utility)というネウチです。

そうである以上、どれほど「価値」のある商品を創造したとしても、生活民の「私効」として認められなければ、ほとんど意味がありません

供給者が創造したという「価値」を、一方的に押し付ければ押し付けるほど、需要者としての生活民はそっぽを向いて、時にはそれを無視することになります。

本当に「新たな価値」を創造したいのであれば、一人ひとりの生活民が求めている個々の「私効」に対して、的確に対応できるモノを提供していくことが必要です。

それには、可能な限り「押しつけ」を排して、「インタラクティヴィティ(interactivity=相互交換性)」や「カスタマイゼーション(customization=利用者参加性)などのネウチを備えた「個効(Individual Utility)を提案していかなければなりません。

つまり、「(社会と個人の間の)間人界において、生活民がパロール1=個人使用を行う時に、一人の個人として、社会的効用を受け入れた個人的有用性」を、新たに創り出すことが求められているのです。

こうした視点を無視した、安易な「新価値創造」を行えば、生活民からほとんど無視されることになり、新たな市場を作ることなど到底無理となるでしょう。

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