ところが、最近の経営戦略論やマーケティング戦略論などでは、シンボリック・ストーリー戦略とか顧客コミュニケーション戦略などという乱暴な命名によって、これらの区分をまったく無視した、粗雑な議論が横行しています。
これは、1980年代以降の差異化隆盛時代から2000年以降の差異化反省時代に至る、約30年間の是々非々論をほとんど顧みない暴挙といえるでしょう。
どこが暴挙なのか、列挙してみましょう。
①発信側の意図的な「記号(サイン:sign)」の連結である「物語」と、発信者が受信者と共有しようとする「象徴(シンボル:symbol)」体系としての「神話」を混同している(参照)。②生活者の「欲望(仏désir、英desire、独begierde)」に訴える手段であるサインと、「欲動(仏plusion、英drive、独trieb)」を呼び起こす手段であるシンボルを混同し、生活願望の構造を無視している(参照)。
③過剰な記号化戦略によって混乱させられた、生活者の自己決定力を、物語重視戦略はさらなる記号の連発によって、いっそう疲弊化させる恐れがある。
以上のような欠陥によって、シンボリック・ストーリー戦略は、2000年以降の差異化戦略への反省や批判を、悉く無駄にしていきます。
マスメディアからデジタルメディアへ、コミュニケーションツールが急速に移行していく現在、安易なストーリー戦略や差異化戦略は、生活者の立場をますます弱めていくのではないか、と強く危惧します。
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