2016年1月7日木曜日

デノテーションとは? コノテーションとは?

差異化という手法が成り立つのは、生活界の中の言語界、つまりコト界において、言葉がコノテーション(connotation)という働きを示すからです。

現代言語学の創始者、F.ド.ソシュール(Ferdinand de Saussure)は、言葉とは表現面と内容面が一体化したものと考えて、表現面を「シニフィアン(signifiant = Sa=意味するもの)」、内容面を「シニフィエ(signifie= Sé=意味されるもの)」と名づけ、一つの言葉を「Sé/Sa」で表しました。

シニフィアンには音声、文字、動作、形などが含まれ、シニフィエには具体的、あるいは抽象的な、さまざまなイメージが該当します。

例えば、「inu」という音声で「犬という小動物」というイメージを表し、「neko」という音声で「猫という小動物」というイメージを示す、ということです。

この考え方を継承した、フランスの思想家R.バルト(Roland Barthes)はさらに、一つの言葉を「入れ子」構造と考えました(『記号学の原理』)。


バルトは、ソシュールのシニフィアンとシニフィエを、「表現面E(expression)」と「内容面C(contenu)」と定義し直し、両者の繋がりを「関係R(relation)」と表現しました。つまり、ソシュールのいう「Sé/Sa」を、ERC」といい直したのです。

このERCを第1次体系とすると、これが別の第2次体の中にのみ込まれる場合があります。これには2つのケースがあり、1つはEの中に第1次体系が飲み込まれる (ERC)RC、もう1つはCの中に第1次体系が飲み込まれるER(ERC)です。

そこで、バルトは、第1次体系と第2次体系によって、言葉の意味の関係には3つのケースが生まれてくる、と主張しています。


  1. ERC:EがCを具体的に直接的に示すケース・・・デノテーション(denotation:外示)
  2. (ERC)RC:1つの言葉(ERC)がEとなって、新たなCを示すケース・・・コノテーション(connotation:共示)
  3. ER(ERC)Eが(ERC)というCを示すケース・・言語(metalanguage)

「ばら」という単語で考えてみましょう。「バラ」という音声(E)で「植物の薔薇」という内容(C)を表わす場合がデノテーション、「バラ/薔薇」という言葉(ERC)で「幸福」(C)を表わす場合がコノテーション、「バラ」という音声(E〉が「bara」という表音記号(ERC)を表わす場合がメタ言語です。
 
 こうした特性のため、デノテーションは日常の会話で、コノテーションは文学などの言説で、そしてメタ言語は科学的な論文などで、それぞれ多用されています。
 
このうち、コノテーションは、デノテーションの示す第1次的な意味によって、情意的ないしイデオロギー的な第2次的なメッセージを伝えるという、重層的な役割を果たしています。
 
「コノテーションに関する諸現象はたしかに、ありとあらゆる文化のことば、とくに文学において大変重要性をもっている」とバルトも述べています。
 
詩や小説でコノテーションが重視されるのは、言葉が具体的な対象を示すだけでなく、比喩的にさまざまな事象を示すことができるからです。
 
差異化とは、こうした言葉や記号のコノテーションを応用して、商品やサービスに意味づけを行い、ユーザーの心の中に「欲望」を沸き立たせる戦略です。
 

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