人減先進国としての日本の将来。それを考える前提として、過去100年間、人口増加時代の生活様式がいかに変わってきたのか、を確認しています。
前回の家族構成に続いて、今回は居住状況の変化を人口分布の推移で振り返ってみます。
統計的なデータが残っている、約100年前からの人口分布を顧みると、下図のようになります。
この図では、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8地域を「大都市圏」と定義し、その他の地域と区分しています。
①大都市圏の人口は、1920年の1595万人から1940年の2532万人を経て、戦後の1947年に2269万人とやや減少した。1950年の2544万人あたりから急増し、1960年の3347万人、1980年の5106万人の後、やや伸び率を落としたものの、2005年に5879万人となった。その後は総人口の減少にも関わらず、2020年には6134万人に達している。 ②全人口に占める大都市圏人口の比率は、1920年の28.5%から1940年の35.2%までは上昇したが、終戦直後の1947年には29.0%まで下がった。1950年の30.2%から1980年の43.6%あたりまでは急上昇し、その後はやや緩和したものの、2015年に47.7%、2020年には48.6%に達している。総人口のほぼ半分が大都市圏に住んでいるということだ。 |
以上のような変化は、生活民の暮らしにどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
❶生活態様:連動型から分散型へ 非大都市圏における生活活動は、生産や消費、居住や移動などが比較的近距離の空間の中で、連動的に営まれていた。しかし、大都市圏の拡大に伴って、それぞれが分散し、さまざまな遠距離空間で独立的に営まれる、という割合が拡大した。 ❷生産と消費:連結型から分立型へ 非大都市圏における生活民は、生産活動と消費活動をほとんど連結して行っていたが、大都市圏の拡大とともに、両者は完全に分離され、生産活動は分業化、消費活動は個々人による個性化の色彩を強めていった。 ❸家族形態:大・中家族から小家族へ 非大都市圏の家族形態は、三世代家族や複合家族など比較的多数であったが、大都市化が進むともに二世代、夫婦のみ、単親、単身など小家族の比率が拡大した。 ❹コミュニティ:地縁型から職縁型へ 非大都市圏における生活民相互の人間関係は、地域社会というコミュニティと濃厚に繋がっていたが、大都市化が進むにつれて地域とは徐々に離れ、職場や職縁というコミュニティの比重が拡大した。 ❺生活行動:情動的から合理的へ 非大都市圏における生活民は、農林漁業、小規模製造業、小売業などに関わる比重が多く、その生活行動もかなり感覚的、心情的な比重が強かった。しかし、大都市化が進むとともに、通勤、通学、職場環境、購買環境などで、数値的、合理的に行動する比重が高まってきた。 |
このように見てくると、人口増加と大都市化に伴って、生活民全体の生活行動もまた、総合・連結型の様式から個別・分散型のスタイルへと、その比重を移してきたものと解釈できます。