USマーケティングによく似たコンセプトに、リバース・マーケティング(Reverse Marketing)やコントラ・マーケティング(Contra Marketing)があります。
リバース・マーケティング(Reverse Marketing)というコンセプトを、1988年に初めて提唱した、アメリカの経営学者M.R.Leenders とD.L.Blenkhornは「リバース・マーケティングとは、購買者が供給対象へ達するための積極的かつ想像力豊かなアプローチ」と定義しています(“Reverse Marketing:The New Buyer-Supplier Relationship”)
7年後の1995年、オランダの経営学者W.G.BiemansとM.J.Brandも「リバース・マーケティングとは、マーケティング担当者が顧客を探すのではなく、顧客が会社を探すためのマーケティング手法」と定義したうえで、従来のマーケティングが、顧客の生活願望をターゲットにした売り手側のアプローチであったのに対し、リバース・マーケティングは、「望ましい製品を提供してくれる、潜在的な売り手に向けて、顧客側が行うアプローチ」、と述べています("Reverse Marketing: Synergy of Purchasing and Relationship Marketing")。
こうした論調を受けて2002年に、マーケティング学界の重鎮、P. Kotlerもまた「デジタルエコノミーの影響により、売り手から買い手へのパワーシフトが進むにつれて、リバース・マーケティング、つまり顧客主導のマーケティングが台頭している。ウエブの世界では、顧客自らが製品を設計したり、製品構成を決めたりする機能が普及している」と述べて、「顧客が自ら主導する市場行動」を「リバース・マーケティング」と名づけています。(Marketing Moves: A New Approach to Profits, Growth, and Renewal、2002)。
以上のように、欧米では30年ほど前から「リバース・マーケティング」という言葉が、「顧客側から市場へのアプローチする行動」として使用されいます。
しかし、2つの点でやや違和感があります。
① ヨーロッパでは需給両主体の逆転が強調されているが、アメリカでは消費市場を前提にしたうえで顧客側からのアプローチの強まりに力点がおかれている。
② 欧米ともに、従来のマーケティング概念を前提にした、新たなマーケティング手法の一つとして提案されている。
それゆえ、このブログではあえてこの言葉を使わず、新たに「USマーケティング」という言葉を提案しました。
後述するように、購買者や顧客といった主体論や市場調査や広報宣伝といった経営戦略論など、従来のマーケティング概念そのものを大きく超えた発想であるからです。
一方、コントラ・マーケティング(Contra Marketing)という言葉は、主にヨーロッパで使われており、「タバコ、アルコール、薬物など、有害とみなされている需要を排除することを目的とした活動」と定義されています。つまり、有害商品の販売活動に対する抵抗活動です。
この概念が拡大されて、あらゆる商品を無頓着に拡販するマーケティングという活動そのものに対する「反抗」あるいは「抵抗」を示す言葉とも解されています。その意味では「アンチ・マーケティング(Anti-Marketing)」ともいうべきものです。
こうした論調はヨーロッパで広がっていますが、否定的な生活行動に限られていますから、あまりこだわりすぎると、マーケットを積極的に活用するという視点が弱まってきます。
それゆえ、このブログの「USマーケティング」では、市場社会を前提にしつつも、供給側からだけのマーケティング概念を超えて、より広く「生活民」視点からの生活運営行動を提案していきます。
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